杉江 松恋
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芸人本書く列伝classic vol.36 プチ鹿島『教養としてのプロレス』
プチ鹿島『教養としてのプロレス』は前書きと後書き、そして16の章から成る。そのうち「なぜプロレスを教養として語る行為が現代人にとっては有効なのか」という本論を構成するのが、第1章「プロレスは誰でも体験できる」、第3章「人生の答え合わせができる」、第4章「プロレスで学ぶメディアリテラシー」、第5章「引き受ける力を持つ」の4つの章だろう。 これは「...
芸人本書く列伝classic vol.35 コロッケ『マネる技術』
ものまね、という芸が私にはよくわかっていない。 寄席芸で言うところの「形態模写」あるいは「声帯模写」ならばなじみが深いのである。あれは話芸の中にその折々の時事に関する有名人や、人気者(歌舞伎役者や映画スターなど)を織り込んで「ご機嫌を伺う」という芸である。四季を感じさせる鳥の鳴き真似を得意とする江戸屋猫八という名人もいましたね。 話芸なく...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年12月福島県いわき市「阿武隈書房」
年始に青春18きっぷを四日間分使うあてができた。残る一日分を何に充てるかを考えて、まだ行ったことがない古本屋を訪ねる「だけ」に使うことに決めた。行く先は福島県いわき市である。 時刻表で調べると、二十三区内からは二回の乗り換えで行ける。新橋駅から十時四十二分発の上野東京ライン勝田行きに乗ると水戸駅発十二時十分のいわき駅行きに接続できる。これが十三...
芸人本書く列伝classic vol.34 マツコ・デラックス『デラックスじゃない』
マツコ・デラックスが、ナンシー関の後継者として名前を挙げられることを嫌がっているという噂を聞いたことがある。とても意外だった。没後、これでテレビ評論は終わったとまで言われ、その唯一無二の文章力を賞賛されたナンシー関、その跡を継ぐ者と目されることは光栄であれ、迷惑であるはずがないからだ。しばらく前に横田増生『評伝 ナンシー関』が朝日文庫に入ったとき、帯...
芸人本書く列伝classic vol.33 アル北郷『たけし金言集 あるいは資料として現代北野武秘語録』
一口で言うならば、芸人の了見を示した本である。 アル北郷『たけし金言集 あるいは資料として現代北野武秘語録』(徳間書店)は、1997年から7年にわたってビートたけしの付き人を務めた芸人による、「殿」の名言珍言集だ。アル北郷は水道橋博士の同居人として、その公式サイトで連載を持っていたこともあるので、本メールマガジンの読者であればご存じの方が多いは...
芸人本書く列伝classic vol.32 立川談志『談志が遺した落語論』
記憶にないのだが、この前に三回休載しているらしい。そのお詫びから入っている。ただでさえ長い原稿なのに、冒頭には電撃座のことまで書いている。電撃座興行をお休みすると書いたばかりのときにこの原稿というのは皮肉な話だ。頭を削ることも考えたが、当時のまま再掲することにする。 電撃座の落語会をお休みします~杉江松恋からのご挨拶 ==============...
bookaholic認定2018年度翻訳ミステリーベスト10決定!
二人合わせて翻訳メン! の翻訳マン1号・川出正樹と翻訳マン・2号・杉江松恋がそれぞれの年間お気に入り作品10冊を発表し、その中から議論によって決定するbookaholic認定翻訳ミステリーベスト10。12月11日に千街晶之・若林踏・杉江松恋の3名で行われた国内篇に続いて12月25日に公開選考会が行われました。会場は駒込のBOOKS青いカバさん。平日夜...
芸人本書く列伝classic vol.31 六角精児『少し金を貸してくれないか』
粗暴な人、というのをテレビで観ることが少なくなったように思う。 文字通りの意味で暴漢でしかない人というのは、いる。ニュースの中に出てくる犯罪者がそれだ。しかし、粗暴というのは「物の考え方や行動の仕方が綿密でなくいいかげんな様子」のことだから、乱暴者とはちょっと違うのである。 瀬戸物屋に連れ込まれた牛、というのがまさに「粗暴」だ。別に暴れ出...
書評の・ようなもの サタミシュウ『彼女が望むものを与えよ』
奥付では本日、2018年12月25日刊になっているサタミシュウ『彼女が望むものを与えよ』(角川文庫)の217ページを見て驚いた。 本書は、松久淳『彼女が望むものを与えよ』(光文社/二〇〇七年三月刊)を著者名を変更のうえ、文庫化したものです。 サタミシュウ=松久淳ということは、これまで一部にしか知られていなかった事実だと思う。もしかすると、今回の文...
芸人本書く列伝classic vol.30 高田純次『高田純次のチンケな自伝』
高田純次には一度だけ取材でお会いしたことがある。還暦を前に出した『適当論』が当たり、「適当」をタイトルに戴いた著書を連発していたときのころである。たしか『適当男のカルタ』(青山出版社)とCD「適当男のポルカ」が同時発売された記念で、雑誌の企画として大竹まことと対談してもらったのである。 その話の内容はほとんど忘れてしまったのだが、高田純次が何か...