杉江 松恋 一覧

杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー10位 宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』(講談社)

 宮内悠介の連作短篇集『彼女がエスパーだったころ』には三つの特徴がある。 一つは異端とされているものにあえて光を当てる行為だ。たとえば表題作は、ドキュメンタリー作家・森達也がスプーン曲げで一世を風靡した清田益章を取材した『職業欄はエスパー』(角川書店)から想が採られている。〈超能力者〉として世間の好奇心を刺激しまくる存在となった及川千晴という女性が登場...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー1位 真藤順丈『夜の淵をひと廻り』(KADOKAWA)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー1位 真藤順丈『夜の淵をひと廻り』(KADOKAWA)

※bookaholic認定2016年度国内ミステリー1位だった本書が角川文庫に入りました。帯にはbookaholic認定1位と謳っていただいております。書店でご確認ください。 交番勤務の巡査を主人公にした連作ミステリーには乃南アサ『ボクの町』(新潮文庫)などの前例がある。真藤順丈『夜の淵をひと廻り』が先行作とひと味違うのは、主人...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリー第6位 ダニエル・アラルコン『夜、僕らは輪になって歩く』(藤井光訳/新潮クレスト・ブックス)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリー第6位 ダニエル・アラルコン『夜、僕らは輪になって歩く』(藤井光訳/新潮クレスト・ブックス)

 過去の記述から小説は始まる。主要な登場人物の一人であるネルソンがまだ幼なく、その父母の視点を借りなければいけないような過去だ。1980 年代のそのときをネルソンの父親は「不安な日々」と呼ぶ。舞台となっている名前の記されない国で、内線が起きていた時代なのだ。そのころ、ヘンリーという名の劇作家がディシエンブレという名の小さな劇団を結成した。だが彼は後に逮捕され...

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bookaholic認定2016年度国内ミステリーベスト10結果速報

bookaholic認定2016年度国内ミステリーベスト10結果速報

12月14日に行われた千街晶之・若林踏・杉江松恋による公開選考会議により、以下の順位が決定しました。ご来場いただいたみなさまに御礼申し上げます。 全候補作リストとあらすじはこちら。 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリーベスト10結果速報。 1位:真藤順丈『夜の淵をひと廻り』角川書店 2位:角田光代『坂の途...

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bookaholic認定2016年国内ミステリーベスト10選考会議作品リストとあらすじはこちら

bookaholic認定2016年国内ミステリーベスト10選考会議作品リストとあらすじはこちら

本日、千街晶之・若林踏・杉江松恋の3人によって行われる「bookaholic認定2016年度国内ミステリーベスト10選考会議」の候補作は以下の通りです。この中から2016年度の最も読むべき1冊を決定します。(詳細はこちら) 作者五十音順 青崎有吾『アンデッドガール・マーダーファルス1・2』講談社タイガ 吸血鬼などの怪物や、ホ...

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マイクロシアター電撃座情報・今後の杉江松恋プロデュース落語会スケジュール【20161209更新】

マイクロシアター電撃座情報・今後の杉江松恋プロデュース落語会スケジュール【20161209更新】

12/11(日)時間:0時半開場/1時開演(~3時終演予定) タイトル:「オールナイトで談四楼#18」出演:立川談四楼、立川語楼 ※日本で唯一、午前1時に始まる真の「深夜寄席」です。 12/12(月)時間:18時半開場/19時開演(~21時終演予定) タイトル:「三遊亭はらしょう・キャプテン渡辺二人会」 ※ピン芸人のキャ...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリーベスト候補作 ドン・ウィンズロウ『ザ・カルテル』(峯村利雄訳/角川文庫

杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリーベスト候補作 ドン・ウィンズロウ『ザ・カルテル』(峯村利雄訳/角川文庫

 メキシコ・カルテルの撲滅という使命を奉じる男アート・ケラーと若き麻薬王アダン・バレーラの三十年戦争を描いた『犬の力』(角川文庫)は、喩えるならば麻薬戦争の神話、すなわち神と悪魔の間で繰り広げられる最終戦争を描いた作品だった。その続篇である『ザ・カルテル』の舞台となるのは、もはや神の存在しない世界である。絶対的な力を持つ者が全体を統御できる時代は終わった。麻...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリーベスト候補作 ジェフリー・ディーヴァー『煽動者』(池田真紀子訳/文藝春秋)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリーベスト候補作 ジェフリー・ディーヴァー『煽動者』(池田真紀子訳/文藝春秋)

 ジェフリー・ディーヴァーは時代の空気を嗅ぎ分ける性能の良い鼻を持っている。たとえば、リンカーン・ライム&アメリカ・サックスの連作では2008年発表の第8作『ソウルコレクター』(文春文庫)以降、先端的な社会問題を利用して悪人が犯罪計画を企む物語が連続して発表された。『煽動者』は同シリーズから派生した、キャサリン・ダンスが主役を務める連作の第4長篇だが、本書で...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリー第8位 ベン・H・ウィンタース『世界の終わりの七日間』(上野元美訳/ハヤカワ・ミステリ)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリー第8位 ベン・H・ウィンタース『世界の終わりの七日間』(上野元美訳/ハヤカワ・ミステリ)

 間もなく世界が終わるのに、殺人事件の謎を解くことに意味があるか。 その問いを初めて読者に呈示したのはエラリー・クイーン『シャム双子の謎』(創元推理文庫)だった。探偵エラリーにとっての世界の終わりとは山火事に遭って関係者が全員焼死するという局地的な出来事だったのだが、それを世界的な規模に拡大し、小惑星の衝突によって地球文明自体が崩壊するという事態を三部...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリー第7位 ハンナ・ジェイミスン『ガール・セヴン』(高山真由美訳/文春文庫)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリー第7位 ハンナ・ジェイミスン『ガール・セヴン』(高山真由美訳/文春文庫)

〈わたし〉の両親と五歳の妹は、彼女が男にクンニリングスをさせている間にマチェーテを持った傍観に惨殺された。過去と対面することを避け、ロンドンの底へと潜り込んだ〈わたし〉は、時にセックスのサービスを提供することもあるクラブで働き始める。状況が変わり始めたのは二つの出会いがあったからだ。一つは物柔らかな外見だが、その実は一流の殺し屋という評判のあるマーク・チェス...

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