杉江 松恋 一覧

小説の問題vol.23 「お父さんとパンジー」志水辰夫『きみ去りしのち』&船戸与一『龍神町龍神十三番地』

今月も新刊と再刊各一冊を採り上げるが、共通項は「お父さんとパンジー」だ。なんだ「パンジー」って?という疑問もあるだろうが、それは最後のお楽しみ。 まず最初、志水辰夫『きみ去りしのち』は九五年に刊行された短編集の文庫化作品。スタンダート・ナンバーで統一された題名が告げるとおり、旧き良き時代への郷愁が全編に漂っている。 表題作の主人公...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その10 富士「中村書店」

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その10 富士「中村書店」

(承前) 熱海にて夢のような出会いがあり、ぽうっとしながら東海道線の下りに乗る。なんだったらもう帰ってしまってもいいぐらいなのだが、この日はまだ用事の続きがあるのだ。静岡に1泊し、ほぼ1年ぶりに東海道歩きに挑戦するのである。夕刻に同行者の妻と待ち合わせしているのだが、それまで時間が空いている。これはまあ、古本屋に行けという天の啓示であろう。いや...

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小説の問題vol.22 「三島由紀夫と京極夏彦 昭和と平成の天神」徳岡孝夫『五衰の人』&京極夏彦『百鬼徒然袋 雨』

小説の問題vol.22 「三島由紀夫と京極夏彦 昭和と平成の天神」徳岡孝夫『五衰の人』&京極夏彦『百鬼徒然袋 雨』

「問題小説」に連載していた書評、「ブックステージ」は1年弱経過した時点で増ページとなり、新刊と文庫・新書化作品を一冊ずつ扱う形式に変わった。サブタイトルをつけるようになったのもこのときからだ。 それはいいのだが、増ページということを意識してか、この回は肩に力が入り過ぎてしまっている。恥ずかしいったらありゃしないので欠番にすることも考えた。しかし、若気の...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その9 熱海「遊我堂」

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その9 熱海「遊我堂」

さて、またしても静岡行である。 いい加減静岡に移住してはどうか、とか、そんなに仕事が暇なのか、とかいった声が聞こえてきそうだが、仕事は暇である。いや、以前に比べれば、それはね。いいことだ。 静岡移住も、これだけ通っているとありえない話ではないのかも、と思えてくる。あまりにも頻繁に通っているので、熱海が山手線の乗り換え駅ぐらいに馴染深くなっ...

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芸人本書く派列伝returns vol.20 春風亭一之輔『いちのすけのまくら』

芸人本書く派列伝returns vol.20 春風亭一之輔『いちのすけのまくら』

いきなり私事で恐縮だが、二〇一七年十二月一杯で新宿五丁目で営業していたCAFE LIVE WIREは閉店した。といっても姉妹店のHIGH VOLTAGE CAFEというのがすぐそばにあり、トークライブなどはそちらで継続している。昨日も漫画家の田中圭一氏と、『軽井沢シンドローム』のたがみよしひさ氏について語るイベントをやったばかりである。閉店したCAF...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その8・焼津「港書店」

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その8・焼津「港書店」

(承前) 今度はふしぎな古本屋はてなやを出たあとの話。またもやはてなやであれこれ買い物をしてしまい(ちゃんと100円均一棚を見たら、要るものがたくさんあったのだ)、店を出たら14時をまわってしまっていた。余裕があれば富士までとって返して身延線に乗ろうと思っていたのだが、ちょっと手遅れである。かといってこのまま帰ったのでは不効率もはなはだしい。戻...

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小説の問題vol.21 藤原伊織『てのひらの闇』

小説の問題vol.21 藤原伊織『てのひらの闇』

あまり大きな声では言えないが、私も実は昼間会社勤めをしている人間だ。常識よりも社是が優先される会社組織の中で、自我を崩壊させずに生き抜く難しさは、重々承知している。自分を偽るのではなく、第二の自分という人格を作ることが、会社社会を生き抜くための秘訣だろう。藤原伊織『てのひらの闇』は、そうやって懸命に「会社人間としての私」を演じている人にこそ読んでほし...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月・静岡行その7・南伊東「岩本書店」

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月・静岡行その7・南伊東「岩本書店」

(承前) 二日続けてふしぎな古本屋はてなやに行ったわけなのだが、その前にどこに行ったかといえば、南伊東の岩本書店なのだった。伊豆半島は古本屋不毛の地だと勝手に思い込んでいた。たいへん申し訳ないです。岩本書店は地元で長く営業していて、伊豆及び静岡の郷土史関係に強いという。 朝一で自宅を出てまたもや横浜駅に。ここから熱海行に乗る動きは、もはや...

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小説の問題VOL.20 風野真知雄『鹿鳴館盗撮』

小説の問題VOL.20 風野真知雄『鹿鳴館盗撮』

『峠の群像』以来久々の忠臣蔵テーマとなった、今年(注:1999年)のNHK大河ドラマ『元禄繚乱』だが、今一つ盛り上がりに欠ける気がする。来年のテーマが何かは知らないが、個人的に好きな時代は幕末である。中でも司馬遼太郎原作の『花神』などは、中村梅之助の大村益次郎が大好きで、TVドラマ嫌いにしては珍しく毎回観ていた記憶がある。だが、大河ドラマには、幕末テ...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その6・狐ヶ崎「ふしぎな古本屋はてなや」再び

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その6・狐ヶ崎「ふしぎな古本屋はてなや」再び

(承前) 明けて3月14日。本日も日帰りで静岡行きである。 昨日の記事の終わりに「これにて静岡行、ひとまずは終了である」と書いたが全力で撤回する。 というよりも、再び静岡に行かなければならない理由ができたのである。 一昨日の記事で狐ヶ崎のふしぎな古本屋はてなやを訪れたことを書いた。その際、手持ちが不如意であったため、置いて帰っ...

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