歩くもの
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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その5 沼津「平松書店」
(承前) 根気がない。集中力が足りない。細かいことにこだわらない。 そんな性格だと自分では思っているのだが、こと趣味に関しては事情が異なる。 手に入らない本はなんとかして読みたくなるし、行けないと言われている場所には行きたくなるものである。 昨年からずっと宿題として残っていたのが、沼津の平松書店であった。 これまで二回挑...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その4 狐ヶ崎「ふしぎな古本屋はてなや」
(承前) さて、静岡行の二日目である。 静岡駅前にもまだ行けていないところはあるのだが、それよりも優先度が高いのは、機会を作らないと絶対に足を延ばさないような、ぽつんと一軒ある店である。そういうところが逡巡しているうちに閉店してしまった、という経験を今まで何度してきたことか。静岡市内で言えば清水区のエンゼル書店がそうで、東海道歩き...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その3・静岡「あべの古書店」ほか
(承前) 一冊萬字亭から次の目的地までは結構な距離がある。駿府城の北西に浅間神社があり、そこにつながる商店街の入口にあべの古書店という古本屋があるのだ。現在、時刻は午後4時である。閉店にはまだ余裕があるが、とある理由からどうしてもあと1時間で探索を終え、午後6時までにはホテルへのチェックインを済ませておきたかった。 やむをえない、こういう...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その2 静岡「水曜文庫」ほか
(承前) 前回静岡駅までやってきたのは2018年9月のことであった。 そのときはタイミングが悪く、訊ねる店訪ねる店がみなお休みという体たらく、特に道を挟んで近所にある、水曜文庫と栄豊堂書店古書部の二軒に揃って振られたのは、静岡という街自体に拒まれたようでなんとも縁起が悪く感じた。験かつぎではないのだが、とりあえずはそこから攻めていきたいと...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その1 草薙・ピッポ古書クラブ
3月に入り、またあれがやってきた。 青春18きっぷの季節である。 思えば昨年までは不定期に二度目の東海道歩きを実行しており、日本橋から24宿目になる、静岡県島田市の金谷まで歩を進めていた。ところが昨年の春にちょっとした不注意がもとで入院してしまった。病気自体はすぐに治ったのだが、一時的に体力が落ちたのと、なぜかとんでもない...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年12月・武蔵小山「九曜書房」ほか
12月30日に古本屋を巡った話の続き。 そんなわけで学芸大学駅の飯島書店で掘り出し物にぶつかり、いつもならもうおなかいっぱいなのだが、この日は「どうせ仕事にならないし」という自棄気味の外出なので、さらに深みにはまることにした。目指すは東急目黒線の武蔵小山駅である。 目黒は南北に細長い区だ。鉄道路線はその通りには走っていないので、縦に移動し...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年12月・学芸大学「飯島書店」
ライターという仕事は居職だから、机の前を離れると何もできない。人によってはカフェにパソコンを持ち込んで原稿を書くこともできるようなのだが、私は無理なのである。背後にある書棚から適宜参考文献を持ってこないとその先に進めなくなる。そこはネット検索で済ませられない部分で、職人が自分の仕事道具一式と暮らしているのに近い。書棚は仕事道具なのだ。 そういう...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年1月・中村橋「古書クマゴロウ」
西武池袋線の中村橋という駅にはあまり縁がなくて、最後に下りたのはまだ勤め人だった二十年以上前のことではないかと思う。「少年チャンピオン」で『探偵ボーズ21休さん』というミステリー漫画の連載が始まることになり、私を含めた何人かにトリックプランナーのお手伝いをする話がまわってきた。その顔合わせということで、中村橋の中華料理屋に集まったのであった。これは別...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年2月・西日暮里「古書信天翁」
西日暮里駅から線路沿いの坂をだらだら上り、途中で富士見坂をやり過ごして進むと丘の頂上に出る。そこから谷中銀座に向けてくだっていく道があり、途中から階段になっている。通称夕焼けだんだん、谷根千を代表する名所の一つだ。 落語好きにはこの界隈は、五代目古今亭志ん生と十代目金原亭馬生の旧宅があった場所としても知られている。詳細は省くが、谷中銀座の中途の...
街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年2月・竜ヶ崎「竜ヶ崎古書モール」
ツイッターに流れてきた情報で、茨城県の竜ヶ崎市にある竜ヶ崎古書モールが近々閉店することを知った。 閉店してしまうのか。 いや、まだ間に合うじゃないか。遠いといっても飛行機に乗らないと行けないような場所ではないし、鉄道で行っても一時間半ぐらいしかかからない(調べた)。これは絶対に来いということだと確信し、報せを聞いた翌日には常磐線に乗ってい...