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芸人本書く派列伝returns vol.12 三遊亭円丈『円丈落語全集1』
2016年に刊行された「本書く派」芸人の著書を整理していて大事なものが抜けていたことに気づいた。新作派落語家の頭領というべき三遊亭円丈の『円丈落語全集1』である。 この本が抜けてしまった一つの理由は、円丈の自費出版だったからだ。発行元は円丈全集委員会になっており、販売元を映像作品メーカーのクエストが務めている。といっても本にはISBNコードが入...
芸人本書く派列伝returns vol.11 『成金本』
以下は2017年最初の「メルマ旬報」原稿だった。2019年もインフルエンザに罹患したが、この年もやられていたらしい。このときはまだ自分が成金メンバーの一人の聞き書き本を担当することになるなど、知る由もない。 ======================== あけましておめでとうございます。元旦早々インフルエンザに罹患したことが発覚し、強制寝正月と...
芸人本書く派列伝returns vol.10 広瀬和生『僕らの落語 本音を語る! 噺家×噺家の対談集』
これを書いている日の夜(注:2016年12月9日)、新宿五丁目BIRIBIRI寄席改めマイクロシアター電撃座は初めて女性落語家の会を開催する。落語芸術協会に所属する三遊亭遊かりさんの会だ。これまでも前座で女性落語家が上がったことはあったのだが、メインになるというのは初めてなのである。初めて尽くしではもう一つあって、遊かりさんは電撃座の「売り込み第一号...
芸人本書く派列伝returns vol.9 立川談四楼『そこでだ、若旦那!』
先月の30日(注:2016年9月)、何の気なしにtwitterを覗いたら、本マガジンの編集長である水道橋博士が、明らかに私に宛てたと思われる引用付きリツイートをしていて驚いた。「メルマ旬報」には真打・立川談慶と談笑門下の二ツ目である立川吉笑のお二人が連載を持っているのはご存じのとおり。談慶さんは私と同じ「め」組だが、吉笑さんの連載「現在落語論~落語立...
芸人本書く派列伝returns vol.8 立川談四楼『シャレのち曇り』『石油ポンプの女』『談志が死んだ』ほか
「すばる」2016年9月号に、頼まれて落語の演目ガイドを書いた。 といっても個々の演目のストーリーにはそれほど意味がなく、どちらかといえばそれをどのような演出で客に提示するかを問われるのが落語という演芸である。なので自身の落語経験を踏まえ、ストーリーを追っていた聴き手がどのように変化したか、その見本として読んでいただくこととした。題名を...
芸人本書く派列伝returns vol.7 番外篇・『桃月庵白酒と落語十三夜』
今回は番外篇。いろいろ落ち着かない時期に書いた原稿だということでお含みおき願いたい。落語会のことも書いているが、すべて終了しているのでご注意ください。 ================================= つい先日、懇意にしていた翻訳者の横山啓明氏が亡くなった。癌で闘病中ということは知っていたが、堪える訃報だったのである。 そ...
芸人本書く派列伝returns vol.6 山本晋也『カントク記』たこ八郎『たこでーす』
前回に続いて山本晋也『カントク記』(双葉社)のことを書いておきたい。 この本で興味深いのは、1970年代の面白グループについて触れられた箇所だ。面白グループ最大の功績はタモリを世に出すのに貢献したことだが、フジオプロ主義者からすれば少年誌の連載が先細りになっていった70年代後半に、サロン的な憩いの場を赤塚不二夫に提供してくれたという意義...
芸人本書く派列伝returns vol.5 山本晋也『カントク記 焼とりと映画と寿司屋の二階の青春』
山本晋也『カントク記 焼とりと映画と寿司屋の二階の青春』(双葉社)から以下の情景を引いていく。 197×年某月某日、新宿2丁目にそのころあった、ひとみ寿司の座敷で怪しい集会が開かれていた。 怪しいといっても過激派・カルト集団というような物騒なものではなく、漫画家・赤塚不二夫を中心とする「面白グループ」の人々である。これは赤塚の交友...
芸人本書く派列伝returns vol.4 ビートきよし『もうひとつの浅草キッド』
この連載の前身にあたる「マツコイ・デラックス」の第2回で採り上げた本は、2012年に刊行されたビートきよしの『相方 ビートたけしとの幸福』(東方出版)だった。たけし・きよしの二人が出会ったのが浅草のストリップ劇場・フランス座であったことや、実は芸人としてはきよしの方が先輩で、たけしにコンビ結成を持ちかけたのも彼だったという事実など、その後トーク番組で...
芸人本書く派列伝returns vol.3 瀧口雅仁『落語の達人』(続)
前回に続いて瀧口雅仁『落語の達人』(彩流社)の話である。先に書いておくとこの本、平成に入ってから立川談志が死ぬまで、つまり23年分の物故した落語家の名鑑が巻末に付いている。点鬼簿としても資料価値があるので、そういうものに関心がある人は買ったほうがいい。 このあいだも書いたとおり、本書の第一章は立川談志の兄弟弟子で夭折した、新作落語家の五代目柳家...