過去仕事
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芸人本書く列伝classic vol.44 三田完『あしたのこころだ 小沢昭一的風景を巡る』
初めてその番組を聴いたのは床屋だったと記憶している。 時刻は夕方。床屋の待合席には普段買ってない週刊漫画誌が置いてあったので、込んでいるのをこれ幸いと座りこみ、順番になって呼ばれないように、と祈りながらそれを読んだ。当然ながら自分の番が来たときにはすでに外が陰り始めており、夕暮れ時の空を床屋の鏡の中で眺めながら髪を刈られた。 そのとき、不...
芸人本書く列伝classic vol.43 本坊元児『プロレタリア芸人』
またもや休載が続いたあとの原稿らしい。その間の記憶があまりないので詳しくは書けない。 =========================== 二ヶ月のご無沙汰でした(宮田輝の声色で)。 いや、四号も休載してしまい、申し訳ありませんでした。その間、芸人本をまったく読んでいなかったわけではないのですが、なかなかタイミングが合わず。そのう...
芸人本書く列伝classic vo.42 三遊亭圓歌『三遊亭圓歌ひとり語り 全部ウソ。』
私と同じぐらいの世代で、十代のときに寄席出入りをしていた人は、三遊亭あす歌という音曲師のことを懐かしく思い出すことがあるはずだ。 こんな小汚い小屋(失礼)に、なんであなたのような人が! と驚いてしまうほどの、はっとするほどの美人で、三味線を抱えて座ったところになんとも色気があったものである。高座に出てくるとあす歌は、俗謡を一つ唄ってみせたあとで...
芸人本書く列伝classic vo.41 立川談幸『談志狂時代 落語家談幸七番勝負』『談志狂時代2 師匠のお言葉』『談志の忘れもの 落語立川流噺』
2014年12月6日、twitterに一つのツイートが投じられた。落語立川流の古参・立川左談次(2018年死去)が以下のような発言をしていたのだ。 「立川談幸一門(吉幸・幸之進)が本年末をもって立川流退会、芸協入り決定! 因みに私は静かに円満に理事辞任を了承されております(笑)。」 立川談幸が弟子2名と共に...
芸人本書く列伝classic vol.40 立川談春『談春 古往今来』
これは「水道橋博士のメルマ旬報」50号に書いたものらしい。50号で10回抜いたのか。意外とサボっている。最近はサボらずに毎号書いているのだが、当時は月2回連載なので少々疲れていたのではないかという気がする。この内容だと月1回がやはり適切なペースだ。 ======================= 月並ですが、「メルマ旬報」50号おめでとう...
芸人本書く列伝classic vol.39 壇蜜『壇蜜日記』
普段は芸能人のげの字も口にしない知人が「『壇蜜日記』はすごいよ。壇蜜って頭いいんだなあ」と言っている場面に出くわした。一度ではなく三度も同じことがあったので、世の中年男性のうちかなりの数がそう言っているのではないかという結論に達したのである。 『壇蜜日記』はすごいよ。壇蜜って頭いいんだなあ。 「壇蜜って」と「頭がいいんだなあ」の間には「本...
芸人本書く列伝classic vol.38 菅賢治『笑う仕事術』
三代目桂三木助こと小林七郎(故人)は芸人として売れる前、「隼の七」との異名をとるばくち打ちだったという。六代目の三遊亭圓生(故人)が「へっつい幽霊」でさいころばくちを演じる際の盆の振り方が悪い、と言って直されたが、あまりにも真に迫ってえげつないので、三木助に教わった通りにはやらずに戻した、という話がある。五代目古今亭志ん生(故人)もばくちでほうぼうを...
芸人本書く列伝classic vol.37 立川談慶『この一冊で仕事術が面白いほど身につく落語力』
最近読んで最もおもしろかった芸人本は川戸貞吉『初代福助楽屋話』(冬青社)である。初代福助とは、六代目雷門助六の弟子であった人だ。たいへんな博打好きで、あの「隼の七」の異名をとった三代目桂三木助(故人)の朋友であった。関東大震災の後で東京の寄席が激減したため名古屋に去り、そこで地元芸人たちを束ねる立場として活躍した。若いころから女を貢がせる技に長けてお...
芸人本書く列伝classic vol.36 プチ鹿島『教養としてのプロレス』
プチ鹿島『教養としてのプロレス』は前書きと後書き、そして16の章から成る。そのうち「なぜプロレスを教養として語る行為が現代人にとっては有効なのか」という本論を構成するのが、第1章「プロレスは誰でも体験できる」、第3章「人生の答え合わせができる」、第4章「プロレスで学ぶメディアリテラシー」、第5章「引き受ける力を持つ」の4つの章だろう。 これは「...
芸人本書く列伝classic vol.35 コロッケ『マネる技術』
ものまね、という芸が私にはよくわかっていない。 寄席芸で言うところの「形態模写」あるいは「声帯模写」ならばなじみが深いのである。あれは話芸の中にその折々の時事に関する有名人や、人気者(歌舞伎役者や映画スターなど)を織り込んで「ご機嫌を伺う」という芸である。四季を感じさせる鳥の鳴き真似を得意とする江戸屋猫八という名人もいましたね。 話芸なく...