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芸人本書く列伝classic vol.34 マツコ・デラックス『デラックスじゃない』
マツコ・デラックスが、ナンシー関の後継者として名前を挙げられることを嫌がっているという噂を聞いたことがある。とても意外だった。没後、これでテレビ評論は終わったとまで言われ、その唯一無二の文章力を賞賛されたナンシー関、その跡を継ぐ者と目されることは光栄であれ、迷惑であるはずがないからだ。しばらく前に横田増生『評伝 ナンシー関』が朝日文庫に入ったとき、帯...
芸人本書く列伝classic vol.33 アル北郷『たけし金言集 あるいは資料として現代北野武秘語録』
一口で言うならば、芸人の了見を示した本である。 アル北郷『たけし金言集 あるいは資料として現代北野武秘語録』(徳間書店)は、1997年から7年にわたってビートたけしの付き人を務めた芸人による、「殿」の名言珍言集だ。アル北郷は水道橋博士の同居人として、その公式サイトで連載を持っていたこともあるので、本メールマガジンの読者であればご存じの方が多いは...
芸人本書く列伝classic vol.32 立川談志『談志が遺した落語論』
記憶にないのだが、この前に三回休載しているらしい。そのお詫びから入っている。ただでさえ長い原稿なのに、冒頭には電撃座のことまで書いている。電撃座興行をお休みすると書いたばかりのときにこの原稿というのは皮肉な話だ。頭を削ることも考えたが、当時のまま再掲することにする。 電撃座の落語会をお休みします~杉江松恋からのご挨拶 ==============...
芸人本書く列伝classic vol.31 六角精児『少し金を貸してくれないか』
粗暴な人、というのをテレビで観ることが少なくなったように思う。 文字通りの意味で暴漢でしかない人というのは、いる。ニュースの中に出てくる犯罪者がそれだ。しかし、粗暴というのは「物の考え方や行動の仕方が綿密でなくいいかげんな様子」のことだから、乱暴者とはちょっと違うのである。 瀬戸物屋に連れ込まれた牛、というのがまさに「粗暴」だ。別に暴れ出...
芸人本書く列伝classic vol.30 高田純次『高田純次のチンケな自伝』
高田純次には一度だけ取材でお会いしたことがある。還暦を前に出した『適当論』が当たり、「適当」をタイトルに戴いた著書を連発していたときのころである。たしか『適当男のカルタ』(青山出版社)とCD「適当男のポルカ」が同時発売された記念で、雑誌の企画として大竹まことと対談してもらったのである。 その話の内容はほとんど忘れてしまったのだが、高田純次が何か...
芸人本書く列伝classic vol.29 坂上忍『偽悪のすすめ 嫌われることが怖くなくなる生き方』
テレビをほとんど観られない生活をしているのでそれ関連の情報に疎いのだが、「笑っていいとも!」の後継がパーソナリティが日替わりの番組で、そのうちの1人に坂上忍がいるということをネットのニュースで知った。 坂上忍、1967年生まれ。3歳のときに劇団に入り、1972年にテレビドラマデビューを果たしているので、46歳にしてすでに40年を超える芸歴を持っ...
芸人本書く列伝classic vol.28 萩本欽一・小林信彦『ふたりの笑タイム 名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏』
小林信彦『日本の喜劇人』は、1972年に晶文社から刊行された。当時の名義は小林が評論を執筆する際に使っていた筆名の中原弓彦で、1977年に定本版として同社から再版、1982年に新潮文庫に入った。現在は再び『定本・日本の喜劇人』として新潮社から刊行されているが、これは夕刊フジ連載の『笑学百科』や渥美清、植木等、藤山寛美を扱った評伝三作を合本とし、単行本...
芸人本書く列伝classic vol.27 笑福亭鶴瓶・桂南光・桂文珍・桂ざこば・桂福團治・笑福亭仁鶴・小佐田定雄編『青春の上方落語』
私が最初に聴いた上方落語は、当代(三代目)桂米朝のそれだった。NHKのテレビで観たはずで、たしか演目は「鹿政談」だった。奉行の裁きの場面に迫力があり、子供心に「すごいおじさんだなあ」と思った記憶がある(関西弁のおっちゃん、ないしはおっさんという言い方は、まだ東京に入っていなかった)。 こうして明確に覚えているのは、逆にそれだけ上方落語を聴いてい...
芸人本書く列伝classic vol.26 立川生志『ひとりブタ』
立川談志没後二年が経過した。その間に多くの弟子たちが師と、立川流に入門した自分自身とを語る本を書き、世に問うてきた。最も精力的に活動してきたのは立川志らくである。師の教えを自身の人生の指針とすることにすべてを費やしてきた志らくは、一冊の本では足りないとばかりに驚くべき数の本を著した。直近の兄弟子である立川談春が「文藝春秋」に追悼文を発表した以外は沈黙...
芸人本書く列伝classic vol.25 吉田照美『ラジオマン 1974-2013僕のラジオデイズ』
人の生き方は個々に独自の在り様があり、それぞれに特別なものである。 そうした前提を踏まえた上で言うが、これは特化した人生を描いた本だ。 吉田照美『ラジオマン 1974~2013 僕のラジオデイズ』(ぴあ)は、2014年の文化放送入社以来一貫してアナウンサー、もしくは番組パーソナリティーとしてラジオの世界で生きてきた著者の半生記である。もち...