杉江松恋 一覧

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その9 熱海「遊我堂」

さて、またしても静岡行である。 いい加減静岡に移住してはどうか、とか、そんなに仕事が暇なのか、とかいった声が聞こえてきそうだが、仕事は暇である。いや、以前に比べれば、それはね。いいことだ。 静岡移住も、これだけ通っているとありえない話ではないのかも、と思えてくる。あまりにも頻繁に通っているので、熱海が山手線の乗り換え駅ぐらいに馴染深くなっ...

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芸人本書く派列伝returns vol.20 春風亭一之輔『いちのすけのまくら』

芸人本書く派列伝returns vol.20 春風亭一之輔『いちのすけのまくら』

いきなり私事で恐縮だが、二〇一七年十二月一杯で新宿五丁目で営業していたCAFE LIVE WIREは閉店した。といっても姉妹店のHIGH VOLTAGE CAFEというのがすぐそばにあり、トークライブなどはそちらで継続している。昨日も漫画家の田中圭一氏と、『軽井沢シンドローム』のたがみよしひさ氏について語るイベントをやったばかりである。閉店したCAF...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その8・焼津「港書店」

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その8・焼津「港書店」

(承前) 今度はふしぎな古本屋はてなやを出たあとの話。またもやはてなやであれこれ買い物をしてしまい(ちゃんと100円均一棚を見たら、要るものがたくさんあったのだ)、店を出たら14時をまわってしまっていた。余裕があれば富士までとって返して身延線に乗ろうと思っていたのだが、ちょっと手遅れである。かといってこのまま帰ったのでは不効率もはなはだしい。戻...

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小説の問題vol.21 藤原伊織『てのひらの闇』

小説の問題vol.21 藤原伊織『てのひらの闇』

あまり大きな声では言えないが、私も実は昼間会社勤めをしている人間だ。常識よりも社是が優先される会社組織の中で、自我を崩壊させずに生き抜く難しさは、重々承知している。自分を偽るのではなく、第二の自分という人格を作ることが、会社社会を生き抜くための秘訣だろう。藤原伊織『てのひらの闇』は、そうやって懸命に「会社人間としての私」を演じている人にこそ読んでほし...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月・静岡行その7・南伊東「岩本書店」

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月・静岡行その7・南伊東「岩本書店」

(承前) 二日続けてふしぎな古本屋はてなやに行ったわけなのだが、その前にどこに行ったかといえば、南伊東の岩本書店なのだった。伊豆半島は古本屋不毛の地だと勝手に思い込んでいた。たいへん申し訳ないです。岩本書店は地元で長く営業していて、伊豆及び静岡の郷土史関係に強いという。 朝一で自宅を出てまたもや横浜駅に。ここから熱海行に乗る動きは、もはや...

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小説の問題VOL.20 風野真知雄『鹿鳴館盗撮』

小説の問題VOL.20 風野真知雄『鹿鳴館盗撮』

『峠の群像』以来久々の忠臣蔵テーマとなった、今年(注:1999年)のNHK大河ドラマ『元禄繚乱』だが、今一つ盛り上がりに欠ける気がする。来年のテーマが何かは知らないが、個人的に好きな時代は幕末である。中でも司馬遼太郎原作の『花神』などは、中村梅之助の大村益次郎が大好きで、TVドラマ嫌いにしては珍しく毎回観ていた記憶がある。だが、大河ドラマには、幕末テ...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その6・狐ヶ崎「ふしぎな古本屋はてなや」再び

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行その6・狐ヶ崎「ふしぎな古本屋はてなや」再び

(承前) 明けて3月14日。本日も日帰りで静岡行きである。 昨日の記事の終わりに「これにて静岡行、ひとまずは終了である」と書いたが全力で撤回する。 というよりも、再び静岡に行かなければならない理由ができたのである。 一昨日の記事で狐ヶ崎のふしぎな古本屋はてなやを訪れたことを書いた。その際、手持ちが不如意であったため、置いて帰っ...

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小説の問題vol.19 井上尚登『T.R.Y.』

小説の問題vol.19 井上尚登『T.R.Y.』

今、書店には何だかとんでもなくおもしろそうな本が平台に山積みになっている。『T.R.Y.』、今年の横溝正史賞受賞作である。なにしろ帯の煽り文句がいい。主人公は「革命という熱病にうなされる怪男児」だ。 この言葉を見ただけでも、正直、おおっと思った。しかも、 「横溝賞史上、最高傑作!」 との折り紙つき(編集者の情熱を感じる)。こ...

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街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その5 沼津「平松書店」

街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年3月静岡行・その5 沼津「平松書店」

(承前) 根気がない。集中力が足りない。細かいことにこだわらない。 そんな性格だと自分では思っているのだが、こと趣味に関しては事情が異なる。 手に入らない本はなんとかして読みたくなるし、行けないと言われている場所には行きたくなるものである。 昨年からずっと宿題として残っていたのが、沼津の平松書店であった。 これまで二回挑...

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小説の問題vol.18 宮嶋茂樹『空爆されたらサヨウナラ』

小説の問題vol.18 宮嶋茂樹『空爆されたらサヨウナラ』

もうかれこれ三十年以上も私は東京都の住民なのだが、最近になって変わったことがある。都の公報紙「都政だより」にやたらと都知事の顔写真が載るようになったのだ。前任者の青島幸男のころまではそういう慣習はなかったので、これは石原慎太郎の意識的なパフォーマンスなのだろう。私はそれを見るたびに、(失礼ながら)都知事選で敗北した明石康氏のことを思い出してしまうので...

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