芸人本書く列伝classic vol.20 松本ハウス『統合失調症がやってきた』
コンビは別れないものだ。 それは立川談志の持論だった。十代のころから多くの芸人を見てきた談志の経験が言わせたものだろう。田中とは別れるな。まだ駆け出しのころの太田光も、会って間もないころの談志にそう言われたという。 コンビは別れないものだ。 そのことについてあれこれ申し述べられるほど、私は芸人について詳しくない。しかし、そこ...
芸人本書く列伝classic vol.19 樋口毅宏『タモリ論』~メルマ旬報連載を辞めるつもりだった原稿
以下の原稿では樋口毅宏『タモリ論』をとりあげている。水道橋博士から、全連載で同書についてなんらかの形で書いてもらいたいという要請があったのだ。樋口氏はメルマ旬報の連載陣の一人であったので、その形で応援しようということである。 実はこのとき、メルマ旬報の連載を辞めるつもりでいた。正確に言えば、この原稿を送ってもし掲載を断られたら辞意を申し出るつもりでいた...
寸志滑稽噺百席、其の十二はバレ噺大会です←追記
落語立川流の二ツ目・立川寸志さんが滑稽噺だけで百席を積み上げていく寸志滑稽噺百席、第七回からは会場を代えて新宿天神町17にこざいます香音里(こおり)にて開催しております(地下鉄神楽坂駅より徒歩3)。滑稽派の大看板を目指して日々奮闘する寸志さんは2017年度渋谷らくごの「楽しみな二つ目」賞受賞者でもあります。夜8時からの遅い開催ですので、仕事帰りに...
芸人本書く列伝classic vol.18 立川談慶『大事なことはすべて立川談志に教わった』
立川談慶、1965年、長野県上田市生まれ。 おそらくは史上初の、慶應義塾大学卒という学歴を持つプロの落語家である。 前座名は立川ワコール。 故・立川談志門下には一時期奇妙な名の前座が多かったが、その中でも群を抜いて変わった名であると思う。名前の由来は、入門前に務めていた社名から。勝手に名乗ったものではなく、きちんと社長・塚本能交から...
芸人本書く列伝classic vol.17 常松裕明『よしもと血風録 吉本興業社長・大崎洋物語』
吉本興業という会社には、創業時から魅力的な神話がある。創業者は元大阪上町本町橋で荒物問屋を営んでいた吉本吉次郎だが、実質的に寄席経営を仕切っていたのは妻のせいであるというのである。 矢野誠一『女興行師吉本せい 浪花演藝史譚』(ちくま文庫)は膨大な資料を基に書き上げられた評伝の傑作だが、せいが周辺の寄席を買い漁って統合し、興行の一大経営圏を作って...
芸人本書く列伝classic vol.16 清水ミチコ『主婦と演芸』
○月×日 新宿『ロフトプラスワン』で、ルックスも声も素敵なスタッフさんに、「ブロス読者で、清水さんの文章が楽しみです。特に有名人にさん付けして書くところが好き」と、褒められました。とてもうれしかったけど、「そこですか。そこでいいの?」と念のために聞き返しました。 いや、本当にそこでいいのか。 清水ミチコ『主婦と演芸』(幻冬舎)は、そ...
bookaholic認定2018年度翻訳ミステリーベスト10候補作決定!
川出正樹・杉江松恋の二人が自身のベスト10を提出した結果、20作が候補となりました。両者が次点に挙げた作品、別格とした作品も含め書名を以下に記します。 この中からbookaholic認定ベスト10、そして栄えある1位の作品が選ばれます。決戦は12月25日(火)19時、駒込BOOKS青いカバさんにて。お申込みは青いカバさんの問い合わせ窓口(inf...
bookaholic認定2018年度国内ミステリーベスト10決定!
12月11日(火)、東京・駒込のBOOKS青いカバさんにて、bookaholic認定国内ミステリーベスト10の公開選考会が行われました。千街晶之・若林踏・杉江松恋の3名が、まず自分の推薦作を紹介、次いで10作の候補作がその中から選抜されました。 ここまでは順調でしたが、順位決定の段階で問題勃発。奥泉光『雪の階』と深緑野分『ベルリンは晴れているか...
芸人本書く列伝classic vol.15 東野コージ(幸治)『この間。』
「マジギライ界のパイオニア。女子供に容赦しない。時に女にゃ手も上げる。日曜8時の『ごっつ』で嫌われ、以来、嫌われ芸歴二十五年。走って泳いで自転車乗って、汗流して嫌われる。ファンは全員中年男性。Mr.好感度ピンポイント芸人・東野幸治さんです」 これ、東野幸治が深夜番組『ゴッドタン』の「マジギライ」というコーナーに出演したときの紹介文だそうだ。「マ...
芸人本書く列伝classic vol.14 若林正恭『社会人大学人見知り学部卒業見込』
オードリーの若林正恭にはつきあっている彼女がいないのだそうだ。 『社会人大学人見知り学部卒業見込』は、彼が雑誌「ダ・ヴィンチ」に連載した原稿をまとめた単行本である。これは編集者から直接聞いたのだけど、連載中には長くなってしまって規定文字数を超えてしまった回もあり、それを単行本では旧に復しているなど、雑誌掲載分とは異同があるのだという。そういえば、回に...