bookaholic認定2016年度国内ミステリー次点 七河迦南『わたしの隣の王国』(新潮社)

 七河迦南の四年ぶりの新刊、『わたしの隣の王国』のページを繰っていくと、まず登場人物紹介の数の多さに驚かされる。だがそれも当然で、〈ハッピーファンタジア〉という夢の国(言うまでもなく千葉県浦安市にあるアレを模している)が主舞台になるため、その世界における主要なキャラクターたちの名前を紹介する必要があるのだ。それが三分の一、残りの三分の二の登場人物は、二人の主...

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本屋で年越し前前夜! ~book of the year 2016~

本屋で年越し前前夜! ~book of the year 2016~

このところ毎年恒例になっていた下北沢B&Bの「本屋で年越し前夜」、今年は諸事情あってさらにその前夜の29日開催となりました。B&Bの芥川・直木賞イベントではおなじみの大森望さん、豊崎由美さんと、いつもニコニコの特番で鋭い分析をされている栗原裕一郎さん、そして杉江松恋の4人が顔をそろえ、おしゃべりで2016年を振り返ります。 とはいえ、最近は先週起きたこ...

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2016年「今年もっとも凄い本を語る」12/27

2016年「今年もっとも凄い本を語る」12/27

2015年に池袋コミュニティカレッジで行われ、好評を博したイベントの第二弾です。 豊崎由美・西崎憲・米光一成・杉江松恋の4人が2016年に読んだ中から「もっとも凄い本」を持ち寄ってその「凄さ」について語り合う1時間半の集いですが、参加するお客様にもそれぞれの「凄い本」を持ってきていただき、お薦めの数を増やしていければと思っています。 これに近いこ...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー10位 宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』(講談社)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー10位 宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』(講談社)

 宮内悠介の連作短篇集『彼女がエスパーだったころ』には三つの特徴がある。 一つは異端とされているものにあえて光を当てる行為だ。たとえば表題作は、ドキュメンタリー作家・森達也がスプーン曲げで一世を風靡した清田益章を取材した『職業欄はエスパー』(角川書店)から想が採られている。〈超能力者〉として世間の好奇心を刺激しまくる存在となった及川千晴という女性が登場...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー1位 真藤順丈『夜の淵をひと廻り』(KADOKAWA)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー1位 真藤順丈『夜の淵をひと廻り』(KADOKAWA)

※bookaholic認定2016年度国内ミステリー1位だった本書が角川文庫に入りました。帯にはbookaholic認定1位と謳っていただいております。書店でご確認ください。 交番勤務の巡査を主人公にした連作ミステリーには乃南アサ『ボクの町』(新潮文庫)などの前例がある。真藤順丈『夜の淵をひと廻り』が先行作とひと味違うのは、主人...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリー第6位 ダニエル・アラルコン『夜、僕らは輪になって歩く』(藤井光訳/新潮クレスト・ブックス)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリー第6位 ダニエル・アラルコン『夜、僕らは輪になって歩く』(藤井光訳/新潮クレスト・ブックス)

 過去の記述から小説は始まる。主要な登場人物の一人であるネルソンがまだ幼なく、その父母の視点を借りなければいけないような過去だ。1980 年代のそのときをネルソンの父親は「不安な日々」と呼ぶ。舞台となっている名前の記されない国で、内線が起きていた時代なのだ。そのころ、ヘンリーという名の劇作家がディシエンブレという名の小さな劇団を結成した。だが彼は後に逮捕され...

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bookaholic認定2016年度国内ミステリーベスト10結果速報

bookaholic認定2016年度国内ミステリーベスト10結果速報

12月14日に行われた千街晶之・若林踏・杉江松恋による公開選考会議により、以下の順位が決定しました。ご来場いただいたみなさまに御礼申し上げます。 全候補作リストとあらすじはこちら。 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリーベスト10結果速報。 1位:真藤順丈『夜の淵をひと廻り』角川書店 2位:角田光代『坂の途...

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bookaholic認定2016年国内ミステリーベスト10選考会議作品リストとあらすじはこちら

bookaholic認定2016年国内ミステリーベスト10選考会議作品リストとあらすじはこちら

本日、千街晶之・若林踏・杉江松恋の3人によって行われる「bookaholic認定2016年度国内ミステリーベスト10選考会議」の候補作は以下の通りです。この中から2016年度の最も読むべき1冊を決定します。(詳細はこちら) 作者五十音順 青崎有吾『アンデッドガール・マーダーファルス1・2』講談社タイガ 吸血鬼などの怪物や、ホ...

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マイクロシアター電撃座情報・今後の杉江松恋プロデュース落語会スケジュール【20161209更新】

マイクロシアター電撃座情報・今後の杉江松恋プロデュース落語会スケジュール【20161209更新】

12/11(日)時間:0時半開場/1時開演(~3時終演予定) タイトル:「オールナイトで談四楼#18」出演:立川談四楼、立川語楼 ※日本で唯一、午前1時に始まる真の「深夜寄席」です。 12/12(月)時間:18時半開場/19時開演(~21時終演予定) タイトル:「三遊亭はらしょう・キャプテン渡辺二人会」 ※ピン芸人のキャ...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリーベスト候補作 ドン・ウィンズロウ『ザ・カルテル』(峯村利雄訳/角川文庫

杉江の読書 bookaholic認定2016年度翻訳ミステリーベスト候補作 ドン・ウィンズロウ『ザ・カルテル』(峯村利雄訳/角川文庫

 メキシコ・カルテルの撲滅という使命を奉じる男アート・ケラーと若き麻薬王アダン・バレーラの三十年戦争を描いた『犬の力』(角川文庫)は、喩えるならば麻薬戦争の神話、すなわち神と悪魔の間で繰り広げられる最終戦争を描いた作品だった。その続篇である『ザ・カルテル』の舞台となるのは、もはや神の存在しない世界である。絶対的な力を持つ者が全体を統御できる時代は終わった。麻...

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