8月18日。台湾五日目、帰国予定日である。といっても飛行機が飛ぶのは21時近くだから、まるまる一日空いている。LCCを利用したので、羽田空港発着でお安い代わりに便が全部遅い時間なのだ。
この日は妻と相談して、別行動にさせてもらった。台北市内には日本の秋葉原よろしくアニメや漫画関連のグッズを売っているショップが密集している地域がある。数年前に来たとき、同人ショップは一軒訪問済みだったのだが、別の場所も覗いてみたかったのだ。4年後の2020年、東京にはオリンピックが来てしまう。そのときにぶつぶつ言いながら家にいるのも癪なので、できればオリンピックのない場所に逃げてしまいたい。台北は第一候補地なのであった。4年後に楽しく夏を過ごすことができるか、下見である。
ホビーショップやコミックショップが集まっている場所は複数あるみたいだが、最も有名なのは台北駅地下だと聞いていた。地下街に入り、Y12からY16ぐらいまでの出口周辺に、そうした店が集まっているという。
われわれが泊まっていたのは台北駅南側の新光三越がある付近だった。事前の情報ではこのへんにも同人ショップの集まったビルはあったのだが、傾向としては池袋的な品揃えのようだったので今回は見送ることにする。同行してくれる子供が特撮好きなので、そちら優先なのである。巨大な台北駅ビルから地下に入り、訳も分からなくなるほど上ったり下ったりしている間に問題の地域に到着した。
時刻が正午を少し過ぎたばかりでまだ早かったのか、空いている店はまばらだったが、数軒出たり入ったりして見ているうちに、どんどん開店して客も増え、賑やかになった。店ごとに特徴があり、フィギュアが主のところ、ゲームショップ、カード専門店が5:3:2というところか。フィギュアショップが圧倒的に多い。それもほとんど最近の作品ばかりで、掘る意味はあまりなさそうだった。
途中までつきあってくれた妻はどこかに行ってしまったので(足つぼマッサージに行っていたらしい)、探求心を露わにしつつ店を見ていく。なるほど、ねんどろいどはこっちでは粘土人なのか。18禁のフィギュアがあったら子供の手前ちょっと気まずいな、と思っていたのだが、それは店頭には出ていなかった。店によってやり方は違うのだろうが、あるところでは店頭に置かれたファイルのカタログを見ながら客が注文するようなシステムになっていた。
正直どこも品ぞろえにそれほど違いがあるわけではないので、20軒近く見ても2時間程度で一周してしまう。子供と相談の結果、以前行ったことのある台湾大学近くの緑林寮を再訪させてもらうことにした。8月12日から台湾でも「シン・ゴジラ」の公開が始まっていて、どんな具合になっているのか興味があったのだが、上映情報がないので仕方ない。
台北駅から乗り継ぎ1回で台湾大学のある公館駅まで行ける。MRTで約15分程度だ。台湾大学は元の台湾帝国大学で、当時の遺構も若干存在する。その一つである正門前から信号を渡ったすぐのところに緑林寮は入っているのだ。
以前ここに来たときは、いきなり店長さんに「日本語で大丈夫ですよ。どんなジャンルの本をお探しですか」と話しかけられてびっくりしたものである。「東方Projectのものを」とお願いして出してもらったのは半分が日本語版だったのだが、それでも記念に購入した。今回も入念に見てまわったものの、東方関係のものは文字主体の考証本しか見つけられず、分厚かったので断念した。LCCなので荷物に重量制限があって、ぎりぎりだったのである。残念ながら空手で帰ることになった上に、同人ショップの棚を掘り返す雄姿を子供に見られてしまったが、気にしない。君もいつか父が買いたくなるような本を作れ。
MRTで台北駅に戻り、妻と合流。羽根付きの珍しい小籠包を出すという店で夕食を摂って、桃園空港へ向かった。これにて今回の台湾旅行は終了である。
旅行の間kindleに入れてずっと読んでいたのが田丸浩史『ラブやん』だった。去年完結したあと、通しで全部読もうと思っていたので、ちょうどいい機会だと判断したのであった。台湾に着いたら、と取っておくつもりがつい東京にいる間に全部読んでしまい、にもかかわらずおもしろかったので台湾でももう1回繰り返して読んだ。帰りの飛行機の中で3回目の再読を初めて、ついさっきまた22巻を読み終えたところである。どこがどうおもしろいのかを説明すると長くなるので、ここではしない。ヒロインがほぼ全篇にわたってTシャツかトレーナーしか着ないという潔さに惚れたとだけ書いておきたい。たぶん今月中にもう一度読む。
というわけで私の夏休みは台湾と『ラブやん』で終わりました。
(番外編おわり)