落語会レポート 新宿末廣亭余一会で嬉しい驚きあり

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新宿末廣亭八月特別興行「立川流一門会」20160831

2016-08-31 19.24.39夏の終わりの日に末廣亭である。ここでの立川流余一会は何年ぶりだろうか。少なくとも立川談志没後は初めてのはずである。昼夜興行なのだが、夜はあいにく予約席が売り切れており、所用もあったために昼席だけ聴くことにした。

いつものとおり12時に行くと今日に限り13時開演で、少し時間をつぶしてから入場する。立川流の興行でいつもお会いする方が何人かいらっしゃり、やはり特別な日なのだと再認識する。客席は8分の入りというところか。やはり志の輔が出る夜席のほうが人が多そうだ。昼より夜のほうが入りがいいというのも珍しいのではないか。

以下が番組である。

開口一番 子ほめ 笑ん

強情灸 談吉

皿屋敷 小談志

寿限無 晴の輔

思い出の末廣亭 左談次

片棒・改 談笑

仲入り

洒落小町 談慶

看板のピン 雲水

選挙あれこれ 談之助

バイオリン漫談 マグナム小林

酢豆腐 左談次

開口一番が終わって談吉が上がったところで嬉しい知らせが。

「ご心配のみなさまにお知らせします。今日、左談次師匠が出所しました。仮出所ですが」

左談次自らツイッターで癌治療のため入院中と明かしたのを知っている観客が、おおっ、とどよめく。テケツの貼り紙に主任が左談次から龍志に代わるとの報告があったので、休席もやむなしと思っていたのだが、これだけでも嬉しい。

晴の輔の寿限無は後半に思い切り手を入れたおもしろいもので(頭にこぶを作るのが寿限無で、そのあとの展開で大笑いさせられる)、いいものを聴いた、と余韻に浸っているところでめくりが左談次と出た。パンフレット通りであれば次は談笑、そして龍志で仲入りなのである。出囃子が鳴って左談次登場、場内は拍手に包まれた。話題は入院中のスケッチと、落語協会時代に寄席に出た思い出について。「思い出の末廣亭」というのは、私がパンフレットに書いたメモでもちろん正式な題ではない。7 月の立川流兄弟会を、直前でキャンセルされたあと、ずっと心配していた。お元気に高座に戻られたのが本当に嬉しい。

この日は末廣亭に来られるのは初めてというお客さんも多かったと思う。隣に座られていたご婦人がたぶんそうで、マグナム小林のバイオリン+タップの芸に大喜びしておられた。そのマグナム小林は元立川流であることを明かし、自分のことを「脱北者」と紹介した。

「脱北者が北に戻ったら、何が待っているかはわかりますね。そう、強制労働です」

8月31日は落語芸術協会の寄り合いで、今頃他のみんなは飲んでいます、ほら強制労働でしょ、と笑わせての芸は膝代わりにぴったりな軽くていいものだった。隣のご婦人、きっとファンになったのではないかしらん。

トリは「早い上がりだと思っていたから1時にはここに来ていて、ずっと落語を聴かされて疲れちゃった」とぼやいてみせた龍志。去りゆく夏を惜しむように酢豆腐に入った瞬間、嬉しさの余り私は小さくガッツポーズである。実にいい酢豆腐、いっぱい食わされた半公が「今日は家を出るとき何かあると思ったんだ。トリなんかとらされるしさ」とぼやいたのが非常におかしかった。

いい余一会でした。これをぜひ夏の恒例にしてください。

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