三遊亭はらしょう独演会「ドキュメンタリー落語の夜明け」20160830
ドキュメンタリー落語というのは、三遊亭はらしょうさんの造語で、自身の体験を落語形式の語りに尚したもののことだ。
最初に聴いたのは高校時代の噺で、はらしょうさんが通っていたのはきうちかずひろ『BE BOP ハイスクール』のような不良の溜り場だったという。修学旅行が偶然阪神淡路大震災と重なり、マスコミに一躍注目されることになって、という内容だった。もうひとつ、東京都練馬区の豊島園でアルバイトをしていたときの話も聴いた。やたらと滑舌の悪い先輩の指示を苦労しながら聞き取っていくというもので、異星人とのファーストコンタクトのような雰囲気がある。
こうした珍談、いわゆる「一つはなし」というやつをネタトークという形で芸人が披露することがよくあるが、はらしょうさんのそれは口調も含めて落語のものになっていて、おもしろいと感じた。最近は練馬区のココネリという商業施設の多目的ホールで定期的にドキュメンタリー落語の会を開かれていて、そのベスト版という形で今回はお願いした次第だ。
この日の番組は以下のとおり。
金玉ころころ はらしょう
赤い糸 はらしょう
「金玉ころころ」は認知症を患った祖父の話で、介護の噺でもある。お年寄りに人気があるそうだが、それはそうだろう。「赤い糸」のほうは、やはり豊島園アルバイト時代に出逢った怪人の話で、この日が2回目の口演だったそうだ。
この会は今後も続けていく予定で、次回はゲストを招聘することがもう決まっている。他にないドキュメンタリー落語の世界を体感したい人はぜひ。
ところで、ご存じの方も多いと思うが、はらしょうさんは三遊亭圓丈の弟子である。名前の由来は本名の原田+圓丈の前座名である「ぬう生」から取って「はら生」なのだ。一時期破門になっていて、圓丈のホームページはそのころのままなので「元弟子」の記述である。しかし、そのあとで復縁し、門下に戻っているのだ。退会した落語協会はそのままなのが面倒くさい。こういう場合は師弟関係としてはどういう扱いになるのか、外野の人間としてはよくわからない。しかし「実験落語NEO」など師匠からの仕事ももらっているし、何よりも圓丈に対しての思いも十分にある。自称「第三の落語家」ではあるが、存在の第一義としては「圓丈の弟子」なのだと私は思っている。
「それにしても師匠のホームページ、なんとかしてほしいんですけどね」
と、打ち上げの席でちょっとぼやいていた。