「若い=入門10年未満」「おじさん=入門時33歳以上」の二ツ目が芸を競い合う会として発足した興行「若いおじさんの会 中年の星争奪戦」の第三弾は、落語芸術協会から春風亭柳若さん(瀧川鯉昇一門)、五代目円楽一門会から三遊亭鯛好さん(三遊亭好楽一門)の出演となった。例によって、会の趣旨及びルールは第1回のレポートを参照のこと。
自由課題1席、テーマ課題1席の計2席をそれぞれ掛ける形式の落語会である。今回のテーマは「人生」。「逆境に負けないロックな噺」をそれぞれの演者に1席ずつ選んでもらった。
この日の番組は以下の通り。以下敬称略で。
オープニングトーク 柳若・鯛好
饅頭怖い 鯛好
皿屋敷 柳若
仲入り
お見立て 鯛好(テーマ落語)
御神酒徳利 柳若(テーマ落語)
上記のテーマを決めたのには理由があった。実は柳若・鯛好の両者とも、大のロックファンだったのである。特に柳若は伝説の第1回フジロックフェスティバルに参加経験があり、それ以来前座として自由がきかなかった期間を覗けば毎年欠かさずに会場へと足を運んでいたという野外フェス経験者であり、雨が嫌いで観覧はもっぱら屋内会場という鯛好を前に黎明期フジロックについて語るというオープニングトークとなった。
前半の2席はそれぞれ自由課題の噺だ。鯛好の饅頭怖いは、噺を知っていると途中でちょっと驚く個所がある変速篇、柳若の皿屋敷は「お菊の幽霊が皿を数える=ライブ」という解釈で後半への興味をつなぐものだった。あの人やあの人がお菊さんの前座を務めるという遊びが楽しいので、ぜひ生で聴いていただきたい。
後半に入り、先攻はまず鯛好。自分が嫌われているなどとは夢にも思わない、純真な(鈍感ともいうが)杢兵衛大尽となんとかして座敷に出るのを回避しようとする黄瀬川花魁の間で板挟みになり、なんとか嘘八百で事態を打破しようとする若い衆・喜助の姿はなるほど逆境に耐える者のプロテストソングのようである。そして柳若の御神酒徳利は、自分のちょっとしたいたずらが元で嘘を吐く羽目になってしまい、仕方なく流されるままに生きていくことになるというトリックスターを主役にした長篇で、これを飄々と軽く演じた。ちなみに、六代目三遊亭圓生が昭和天皇の前で口演したことでも知られる演目だが、圓生はこれを「ロックな噺」とは思ってなかっただろう。
終演後の判定は、大ネタを軽々と演じた柳若に。皿屋敷との合わせ一本と思っていただいても結構である。この二人の顔合わせ、個人的には対抗戦ではなくてもまた見てみたいと思った。できればまた、近日中に別の形で。
というわけで現在の「中年の星争奪戦」星取は、
柳家さん光 2勝
春風亭柳若 1勝
という形になった。次回、10月5日(水)にはそのさん光・柳若が激突する。お見逃しなく。ご期待ください。