落語会でその日高座にかけられたネタを貼り出すことについての議論が昨日Twitterのタイムラインで賑やかだったようだが、それはおまけのサービスで、なければないで済むもの、という考えを私は持っている。自分が落語会にもっとも通っていた10代のころは、そういう慣習は特に無かったという記憶がある。掲示してくれれば嬉しいが、それを開催者や、まして演者に強要するのは行き過ぎという気がするのである。
ただ新作に関しては、このネタの題名を知りたいな、と思うことが多い。楽屋で口移しに伝えられてきたものが定着したのが現在のいわゆる古典落語の題名であるわけだが、新作に関してはその過程を経ていないため、命名者は演者か、もしくは作者以外に存在しない。だから、現在この噺はなんと呼ばれているのか、という関心を満たす手段が貼り出し以外にないのである。噺がどんどん定着していき、一人の演者ではなくて複数がそれを高座にかけるようになれば、「あ、白鳥作の『マキシム・ド・呑兵衛』だ」とか瞬時に判るので、貼り出してもらう必要もなくなるのだが。
というようなことを昨日の「コイツDEショーYO!! #5」の落語四席が終わった後に流されるエンディング映像を観ながらぼんやり考えていた。あ、エンディング映像というのは、瀧川鯉津さんと春風亭昇羊さんが、あちこちに出かけていってルポをする、というこの会恒例のものである。今回はJR某駅に出かけていった二人が「○○駅何も無いなあ」「だんだん○○が憎くなってきた」とぼやいた後で、なぜか「鯉津と昇羊のどちらが兄さんか、三大勝負で決定する」という展開になって笑った。もちろん年齢も入門も鯉津さんのほうが上です。
この日の番組は以下の通り。
初天神 昇羊
宿屋の仇討 鯉津
仲入り
犬の目 鯉津
風邪泥 昇羊
エンディング映像
仲入り後の「犬の目」は眼病を治してもらいに行くと医者が乱暴というか雑な人物で、くり抜いた眼球を干している間に犬に食べられてしまう、という内容である。医者がヘボン先生の弟子でシャボンという名前なのが落語らしい(余談だが『宿屋の富』の舞台が東海道神奈川宿だったが、ヘボンが滞在して診療所を開いていたのも同じ神奈川宿なので、二つの噺はつながっているのである)。これは鯉津さんの人に合った一席だった。
「風邪泥」がこの日掛けられた新作で、貼り出しになんと書いたらいいのか考えていたら、横から昇羊さんが「カゼドロでお願いします。カゼは熱が出るほうのカゼで」と教えてくれてわかったのである。お客さんも、あの新作は何というのかしら、と聞いてくる方が多かったので、そのタイミングで教えてくれてちょうどよかった。ちなみに題名からわかるように泥棒ものの一席なのだが、マクラと本編が呼応しており、かつ春風亭昇太一門でないと口演できない内容である。お聴きになりたい方は昇羊さんを追っかけるよろし。
次回の「コイツDEショーYO!!」は五月二十四日(水)開催である。ぜひお運びになってみてください。