「気になる作家招待席」は、杉江松恋が定期的にやっているイベントで、これは、というような注目作を書かれた方にゲストをお願いするものです。これまでいらっしゃったのは、真藤順丈さん『夜の淵を一廻り』(KADOKAWA。2016年度bookaholic認定国内ミステリー1位)、角田光代さん『坂の途中の家』(朝日新聞出版。日本推理作家協会賞候補作)、青山文平さん『半席』(新潮社。同)でした。事情があって4ヶ月の中断があり、復活後最初のゲストに来てくださったのが服部文祥さんです。
服部さんの肩書きは〈サバイバル登山家〉といいます。人間が文明の利器を使って自然に挑戦することを潔しとせず、可能な限り装備は近代以前のものに近づける。すなわち「ずるをしない」登山がサバイバル登山で、食糧なども現地調達を基本としています。
その服部さんが小説家としてのデビュー作として上梓されたのが『息子と狩猟に』(新潮社)でした。2篇が収録されたこの作品集を、私は非常に興味深く読みました。人間が人間として成立しうるぎりぎりの場所に立たされたとき、どのように行動するか。私は犯罪小説を、個人が社会と対立せざるをえなくなった局面を描くものとして理解していますが、『息子と狩猟に』にはそうした要素も含まれていました。サバイバル登山家として極限状態の人間を描いた作品でもあり、私の考える犯罪小説の要素にも合致する。これはぜひお話しをうかがわなければ、と思いました。
服部さんが自作について語られる機会はまだ珍しいと思います。今年の注目株、今のうちに談話をお聴きください。