サークル〈腋巫女愛〉の2冊目の小説同人誌になったのが『博麗霊夢がやってくる』だった。最初の本を『博麗霊夢はそこにいる』にしたのは適当だったのだが、これは元ネタがあって、とんねるずの「ガラガラヘビがやってくる」からつけている。別にとんねるずは好きでもなんでもないのだが。
3編入っていて、表題作の「博麗霊夢がやってくる」「友有り、博麗霊夢来る」、「やってきたのは博麗霊夢」である。正義のヒーローは必ずやってくる。博麗霊夢も幻想郷で何事かが起きればやってくるのである。そのことを、十六夜咲夜、アリス・マーガトロイド、鍵山雛の3人の視点からそれぞれ書いてみた。もう一つ、ミステリー・プロットの基本形として「〇〇かと思ったら××だった」というものがあり、それを自然な形でやってみたかった、という動機もある。話のはじまりと最後では何かが違って見えるようになる、という構造である。これが気に入って、以降の話も同様のプロットを使って書いている。博麗霊夢をかっこよく書くコツみたいなものも、なんとなくこの本で掴んだような気がする。
そういう意味では〈博麗霊夢の日々〉の原点のような1冊なので、10月15日の秋季例大祭前に、全話無料公開してみることにした。よかったら読んでみてください。タイトルのリンクからpixivに飛びます。
幻想郷の紅魔館では、その日朝から主従ともに慌ただしく過ごしていた。「やつ」がやってくるのだ。メイド長である十六夜咲夜は万全を期そうとして、気持ちを整える。
人形遣いのアリス・マーガトロイドは顔見知りが道に行き倒れているのを発見した。半人半霊の魂魄妖夢である。妖夢とは一身同体のはずの半霊が、どこかに消え失せていた。
深夜の山中、厄神の鍵山雛は人間の迷子を発見してしまう。近くには獰猛な獣がいて、このままでは食われてしまう。しかし雛には彼を助けられない訳があった。