昨日は「寸志滑稽噺百席 其ノ八」だった。
この会は前にも書いたとおり、立川寸志さんが真打になったときのことを睨んで始めたもので、そのころには寄席の出番も増えているはずなのだから、絶対に滑稽噺を武器にすべきだ、と考えて私が提案したのである。軽い上がりで15分で演じられるネタをもっと増やしてほしい、ということだ。幸いにも寸志さんが応えてくださって、二人三脚の道のりがきまった。一回三席、ということは隔月開催だと一年に十八席。百席を積み重ねるためには単純計算で六年弱かかる計算だ。今回はそのうちの二十二席目から二十四席目。
演目
権助魚
お血脈(ネタ下ろし)
崇徳院
「権助魚」は師匠・立川談四楼が形を作り、それが広がった。今広く演じられているオチは談四楼起源である。さすがに弟子だけあって軽妙、権助が途中で犬と戯れる場面があるのだが、春風亭昇太の「愛犬チャッピー」を連想した。寸志さんの権助は「おら、隠れ事をするのは嫌いだけど嘘をつくのは得意だ」とほくそ笑む、なかなかに策略家である。
「お血脈」はいわゆる地噺(地の部分の語りが大半を占める)で、今回がネタ下ろし。地噺は以前に「蜀山人」を試したことがあるだけだという。地噺の定番とて、長野出身の先輩、立川談慶さんをいじったりしながら進んでいき、無事にオチまで。この噺、歌舞伎好きの快楽亭ブラック版だと最後が芝居仕立てになるのである。
「崇徳院」は熊さんが若旦那の悩みを鼻であしらったことが後でたいへんな結果を招くのだが、へこたれた人物を描くと寸志さんはやはりおもしろい。毎回へこたれてもらいたいところである。オチ前に人物名をちょっと間違い、アフタートークでもそれに触れて苦笑いしていた。
前回から会場にしている香音里は和室の座敷がたいへんに居心地良い。照明で演者の顔に影ができるのと、高座が軋むのが前回の課題だったが、今回それは克服した。そんなわけで完全な態勢ができたので、ぜひ次回はお運びを。其ノ九は六月二十七日(水)開催です。