サークル腋巫女愛の二次創作同人誌である〈博麗霊夢の日々〉は、基本的にのほほんとした雰囲気を提供したいと考えている。原作者のZUNさんが不動の主人公と認定する博麗霊夢は、基本的にどんなときにも動じず、誰に対しても態度を変えることがない。私はそういう揺るがない主人公が大好きだし、なるべく原作に忠実にしようと考えると、ふてぶてしいほどにのほほんと日々を送っている霊夢さんを書かざるをえなくなるのだ。
そういう決まりを自分で作ってはいるが、第五弾になるこの『さようなら、博麗霊夢』では、霊夢を危地に追い込んでいる。また、二次創作で許される限りの負性、すなわち別離や残酷な死といった、不可逆の運命の中に登場人物を投げ込みたいとも考えた。のほほんとして日々を暮らしている人が、辛い運命から目を逸らしているとは限らない。むしろそれと闘うために積極的に呑気にしているのかもしれないではないか。そんなことを思いながら、書いたのがこの話だ。もちろん最後は、ちゃんとのほほんとしているのだが。
読んでいただければわかるはずだが、幻想郷を舞台にしてはいるが、世の中ではまだまだ多数派を占めている、ある傾向について自分の考えをなるべく率直に反映してもいる。二次創作を読む方の楽しみを損なわない程度には洗練した書き方になっていると自負はしているのだが、どうだろうか。
『さようなら、博麗霊夢』
霧雨魔理沙はあるときから、親友との別離の夢を繰り返し見るようになる。幻想郷で山人によるかどわかしの噂が流れる中、なぜか多忙を極める霊夢と魔理沙は気持ちがすれ違うようになっていた。そしてある日、霊夢に決定的な危機が訪れてしまう。
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