子供の頃からミステリーばかり読んできたので、プロットの類型が体の中に染み込んでいる。本を読んでいると漠然と、あ、これはあのプロットになるのかな、というような展望が浮かんできて、それとの答え合わせをしていくような感じになるのである。
〈博麗霊夢の日々〉シリーズ第6弾の『おやすみ、博麗霊夢』は、自分なりのミステリー観のようなものを盛り込んで書いてみた。成功しているかどうかは別として。もう一つ、今回は明らかな敵を作っている。これまでの過去作では話を通じての敵は、幻想郷の外から来たものなどで、意図的にZUNさん創造のキャラクターは外していた。東方のキャラクターを敵に設定しても後味の悪いものにならないか、そのキャラクターを虐めているような印象を与えずに書くことは可能か、という実験のつもりもある。
表紙には出てこないが、視点人物には命蓮寺チームから村紗水蜜を採用した。はぐれ者が一宿一飯の恩義をずっと忘れずに主に尽くしているような雰囲気があって、村紗は好きなキャラクターの一人だ。
これは蛇足だが、本作の元ネタはマルクス兄弟の映画第一作「ココナッツ」である。どこがどう「ココナッツ」なのかは読んでもよくわからないと思うけど。
『おやすみ、博麗霊夢』
幻想郷中で稲束が地面にぶちまけられるなどの悪戯が多発するようになる。事態を案じた聖白蓮により博麗神社に使わされた村紗水蜜だったが、巫女である霊夢は社務所で寝転がっているだけで何もしようとしない。そのころ村紗の中には、舟幽霊だったころの記憶が蘇り始めていた。
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