これが2017年の短篇ベスト、というアンソロジーが出ます

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編纂委員に加わってから3冊目の『短篇ベストコレクション 現代の小説2018』見本が送られてきた。2017年に雑誌発表された現代小説の秀作を収めたアンソロジーであり、現在は川村湊、清原康正、森下一仁と杉江の4名が編纂委員を務めている。

選考会議の席では何を残すのかでいつも大議論になる。最初に座長の川村氏を除く全員が自分のお薦めを挙げ、そこから削っていく形だからである。今年も収録できる数の3倍近く題名が並び、最初は本を出すのは不可能ではないかと思った。しかし大人同士相談すればわかりあえるものである。最後はつかみあいの喧嘩になることもなく、紳士的に16篇が決定した。

以下に、作者名と題名、初出雑誌を書いておきたい。作者名五十音順なので、実際の収録順とは異なる。またお名前の漢字で機種依存のものは差し替えてある。

青崎有吾「穴の開いた密室」(「読楽」2017年12月号)

いしいしんじ「おとうさん」(「飛ぶ教室」2017年春号)

小川洋子「仮名の作家」(「小説幻冬」2017年4月号)

小田雅久仁「髪禍」(「小説新潮」2017年6月号)

恩田陸「皇居前広場のピルエット」(「小説新潮」2017年7月号)

勝山海百合「落星始末」(「小説新潮」2017年12月号)

川上弘美「廊下」(「きらら」2017年1月号)

川崎秋子「頸、冷える」(「小説すばる」2017年3月号)

澤村伊智「コンピューターお義母さん」(「SFマガジン」2017年6月号)

高野史緒「ハンノキのある島で」(「小説現代」2017年4月号)

野崎まど「精神構造相関性物理剛性」(「SFマガジン」2017年4月号)

深緑野分「緑の子どもたち」(「飛ぶ教室」2017年夏号)

藤田宜永「土産話」(「小説新潮」2017年9月号)

三崎亜紀「公園」(「小説すばる」2017年12月号)

唯川恵「陽だまりの中」(「小説すばる」2017年11月号)

雪舟えま「りゅりゅりゅ流星群」(「小説すばる」2017年1月号)

発表媒体ごとのばらつきとしては「オール讀物」「小説宝石」が無くて「小説すばる」だけ4篇入っているが、これはたまたまである。私が毎月シミルボンで公開している「日本一短篇を読む男」連載を見ていただきたいが、2018年は「オール」「宝石」共良作を多く載せているので、絶対に入ってくると思う。また、注目いただきたいのは光村図書「飛ぶ教室」から2篇も入っていることだ。いしいしんじ「おとうさん」、深緑野分「緑の子どもたち」はいずれも素晴らしい短篇である。児童文学を主とした企画中心の季刊誌だが、単発の短篇を積極的に掲載しており、毎号読むのを楽しみにしている。

また、シミルボンに掲載した「杉江松恋が選んだ2017年の短篇小説ベスト10」との重なりもご覧いただきたい。あそこに挙げた中で入ったのは「仮名の作家」「髪禍」「りゅりゅりゅ流星群」の3篇だけである。藤田宜永は「土産話」ではなく「エアギターを抱いた男」を挙げた。編纂委員1人の好みではなく議論で決まる収録作なので、仕方のないことなのである。

そんなわけで、2018年も5ヶ月が過ぎた。あと7ヶ月、シミルボンの「日本一短篇を読む男」連載を読書のご参考にしていただければ幸いである。そしてこのアンソロジーも良かったらお手に取ってもらいたい。装丁は地味だが、読んで損はしないはずだ。全部がお気に召すとは限らないが、中にはいくつか好きになれる短篇があるはずである。作品を読んでもし、いいな、と思う作家がいたら、その人の単独作もぜひお試しあれ。年間アンソロジーは見本市のようなものである。ここからあなたの読書が広がりますように。

フェイスブックでこの写真を公開したら、「日本人でメジャーのSHOHEIとはSHOHEI BABAことジャイアント馬場ではないか」という意見があった。私もそう思う。

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