杉江松恋不善閑居 バイアグラよ!

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退院後の日々について。

前に書いたとおり、蜂窩織炎で急遽入院し、退院後は再発予防のため血糖値を下げるための静養生活を送っている。本日で断酒して26日目である。ああ、飲まなくても平気なんだなあ、毎日飲んでいたのは単なる習慣だったんだなあ、と毎夜思う。

そういう意味では健康でいいのだが、どういうわけだか目眩に悩まされている。

どうも立ち眩みがする、と思っていたら、先週末にひさしぶりに湯船に浸かって入浴したところ、目の前が真っ暗になって前のめりに倒れるという人生初の体験をした。いろいろ調べたところ起立性低血圧というものらしい。急に動くと脳に血が行かなくなってしまうのである。入浴時はもっと気をつけなくてはならない。これまでの十年間、どちらかといえば血圧高めで生きてきたので、新鮮ではある。

今日になってまた困ったことが出てきた。

私の場合、歩くことが唯一の毎日できる運動なので、そろそろ復帰したい。ためしに本日、昼食後に外出したところ、とんでもない事態になった。視界がおかしいのである。目の前の光景が、水彩画のように輪郭が曖昧に見える。光が目に入りすぎてその部分が浮き上がっているのだ。道路のセンターラインは白の中にところどころ青い光が見えた。

慌てて日陰に入り、「視界 青く見える」でネット検索してみる。青視症という言葉が出てきた。バイアグラを服用すると血流の変化によって網膜がどうにかなってそういう視界になってしまうことがあるのだそうだ。世界が青く見えるんだそうですよ、バイアグラ。飲んだことないけど。

ただ、よく調べてみると青い光が見えすぎてしまうということのようで、青だけではなくてすべての色が露光過多になっている今の状況とはちょっと違うような気もする。私は糖尿病だから眼底出血の有無を調べるため定期的に瞳孔をおっぴろげる検査もやっている。そのときの世界がハレーションに包まれるような見え方ともちょっと違う。世界がゴッホの絵みたいに見える、としか言いようがないのである。仕方がないので帰宅した。

退院してからこの方、真昼に外出したことがあまりなかった。今日になって驚いたというのはそういうことなのだろう。たぶんこれも起立性低血圧の症状なのだと思う。とりあえず眼鏡にクリップ留めするサングラスを買ってみた。そういう場合じゃないのかもしれないけど買ってみた。安かったし。

そんなことがあったので午後の残りはぐったりして過ごし、まるで原稿が進まなかった。ええ、これは言い訳ですとも。いいことのなかった一日だな、と思っていたが、夕方になって初めてお会いする編集者の方がわざわざ近所まで来てくださり、打ち合わせができた。また、駄目元で送っていたメールにも返事がいただけた。驚いたことと良かったことの両方があって相殺されたので、いい一日だったのだと考えることにする。

たぶん10年前の写真。このまま痩せてサングラス着用になるとまた人相が悪くなります。

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