6月23日は第18回本格ミステリ大賞の贈賞式及び祝賀会であった。
今回の受賞者は小説部門が『屍人館の殺人』(東京創元社)の今村昌弘氏、評論部門が『本格ミステリ戯作三昧』(南雲堂)の飯城裕三氏である。私はここ10年ぐらい式の司会を本格ミステリ作家クラブから仰せつかっているので、この日もその任に就いていた。
初めに太田忠司事務局長から選考過程についての説明があり、表彰に移る。ここでちょっとした出来事があった。
初めに小説部門の今村氏が壇上に。
「えー、今村さんはみなさんには隠しておりましたが、実は女性でして」
言うと、場内がざわめく。
嘘である。
実は今村氏、よんどころない事情によってまだ東京入りをしておらず、飛行機で羽田空港に向かっているところなのだった。会場入りはもしかすると終宴ぎりぎりになるかも、と仕切りの光文社編集者から聞き、急遽担当編集者の細田氏が今村氏の代理を務めることになった。細田氏は今村氏の担当である。以前、『アガサ・クリスティー完全攻略』(講談社→クリスティー文庫)の霜月蒼氏が顔出しNGだったために代理で編集者が立ったことがあったが、受賞者遅刻のため、というのは初めてだ。
表彰式は無事に終わって和やかに歓談。いつもならば19時には中締めで散会なのだが、編集者から再び指示が入った。今村氏が19時20分ごろには会場入りできるので、それまで延長して待ちたいという。
18時55分、マイクを握る。
「えー、宴もたけなわではございますが」
言うと場内に、あ、そろそろ、おしまいなのね、という空気が流れる。
「ただいま今村氏が都内に入り、こちらに急行中との情報が入りました。極めて異例の事態ではありますが、そのままご歓談を続けてください」
19時25分、無事に今村氏は開場に到着した。息を切らせたそのままで登壇してもらい、すかさず飯城氏と並んでの記念撮影を行う。やはり二人並んでの写真がないと、絵にならないですからね。トロフィーをマイクに持ち替えて受賞者あいさつ、そして東川篤哉会長の中締めと進んで、無事に閉会までこぎつけたのであった。
この会はずっと神楽坂の日本出版クラブ会館で催されてきたが、建て替えが始まるため、今回で使用するのは最後になる。東川会長もそのことに挨拶で最後に触れ、式の進行を裏から支えてくださったスタッフのみなさんに感謝の意を表したのであった。
終了後は新宿5丁目で行われている全日本大学ミステリ連合の月例会合に顔だけ出し、幹事に挨拶をして帰る。今年も8月に大会が開催される予定である。ゲストは作家の三津田信三氏と澤村伊智氏で、お二人の初対談が公開で行われる。その聴講だけ参加することもできるので、もしよかったらご検討ください。日程と場所は以下のとおり。参加方法などはミス連幹事から近日中に告知されます。
日時:8月18日(土)午後
場所:茨城県つくば市内