7月第1週が〆切になっている新人賞下読みがあって、数日間かけて残りを一気に読んだ。読んでいると、あ、ここが残念、とか、こうしてくれたらよかったのにな、というような気持ちがぽこぽこ浮かんでくるので、twitterで書き留めておいた次第である。
改めて見かえしたら結構な数になっていた。カテゴライズして並び替えてもいいのだが、自分の思考過程を眺めるつもりでそのままにしておく。
お暇なときにでもご覧ください。
新人賞下読みラストスパート中。比較的高齢の男性応募者ほど濡れ場を入れたがる傾向にあり、かつ「挿入」行為にこだわるのはどういうことか。過去の読書経験がそうさせるのか。そうにゅうことか。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) June 30, 2018
新人賞下読みラストスパート中。文字数が限られている梗概でいちばん要らないのは「この小説のテーマは何か」だ。テーマは作品を手にした人が読み取るものであって、応募者が押しつけるものではない。テーマが議論の俎上に載せられるのは商業出版された後で、それ以前には評価対象ではない。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) June 30, 2018
新人賞下読みラストスパート中。読んでいた作品にどうも見覚えがあるなと思ったら以前にも別の賞で手に取ったのと同じであることに気づいた。お色直しはしているのかな。やあ、ひさしぶり。でも二回お会いしたくはなかったですね、と言いつつ三度目はないことを祈る。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) June 30, 2018
新人賞下読みラストスパート中。応募作の中に特定民族への差別意識だとか非科学的なオカルトだとか前時代的な因習の強い思い込みだとかによって書かれた作品があっても下読みはそれだけを理由に落としたりはしないのだけど、そういう作品が二次以降に残った例はあまりないように思う。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) June 30, 2018
新人賞下読みラストスパート中。主人公が超能力の持ち主だったり特殊な世界設定があったりする作品を否定しないが、それが作者に都合のいい展開のために設けられているものに良作があったためしはない。そんなに作者が楽をしている物語を誰が読みたいと思うだろうか。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) June 30, 2018
新人賞下読みラストスパート中。応募原稿を読んでいてがっくりくる瞬間の一つが、開巻早々どうでもいい会話にぶつかったときだ。そりゃ、登場人物たちだって日常会話はする。でもそれを大事な出だしに持ってくる必要があるのだろうか。序盤の密度が低い小説はだいたい最後までだらだらしている。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) June 30, 2018
新人賞下読みラストスパート中。架空の国、近未来、「今」「ここ」じゃない設定。なぜそんな設定なのか意味がわからない作品を読んでしまった。登場人物は全員現代日本人にしか見えないのに。「今ここ」を書けないから逃げているとしか思えない。設定で逃げるのは楽だったろうなあ。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) June 30, 2018
新人賞下読みラストスパート中。開巻しばらく話が動かないがものすごい密度で何かが起きていることを感じさせてくれる作品を読んでいる。そう、別に前に進まなくてもいい。ページをめくったら何かいいことがあると読者に期待を抱かせればいい。いい戦略だ、中盤以降でダレるかもしれないけど。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) June 30, 2018
新人賞下読みラストスパート中。ミステリーは状況説明が必要になるし証言が得られないと先に進めない。ゆえに作者は協力的で多弁な登場人物を出したがる傾向があるのだが、そこで踏みとどまり「この人物はそんなことを喋るだろうか」と考える。キャラクターはそうやって「立てる」ものだと思うのだが。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 1, 2018
新人賞下読みラストスパート中。探偵には既視感がありトリックは平凡。論理の組み立ては脆弱だし現実的でもない。普通に考えれば一次通過は難しいのだが留保マークをつける。何箇所かいい文章があったためだ。小説という部品のおもしろいところで99%が駄目でも残りの1%で強い印象を残すことがある。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 1, 2018
新人賞下読みラストスパート中。長篇なのに内容が細切れの作品。個々の場面がなぜ必要なのか考えず構成を作っているのだろうと思う。長篇に見えるが相互に関連のない章がくっつけてあるだけだ。一行空けの場面転換や、短い章で物語を区切るのを止めてみると、個々の部品の大事さがわかると思うのだが。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 1, 2018
新人賞下読みラストスパート中。顔が潰された死体、失踪者と外見のよく似たちょい役の存在。現代ミステリーではいずれも入れ替わりの可能性に途中で誰かが気づくべき案件で、それについてまったく言及されず最後にどんでん返しとして示されても得意気な作者の顔を読者は白けて眺めるだけである。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 1, 2018
新人賞下読みラストスパート中。キャラクター設定がとても納得できる作品を読んだ。なぜ主人公が物語の中心にいて、特権的な立場なのか。その解として「たまたま世界を解釈しやすい位置にいたから」という理由づけが行われる。最良の偶然。そこで読者を納得させるから後は何をやっても大丈夫になる。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 1, 2018
新人賞下読みラストスパート中。けっこう長い作品。そうなったら嫌だな、と思っていたらやはり解決篇が駆け足気味で説明に納得がいかなかった。複数ある謎の要素のうち、いくつかを前倒しで解説していたらそうはならないのに、と残念。最後に詰め込みすぎると尻切れトンボっぽい印象を与えるし。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 1, 2018
新人賞下読みラストスパート中。そろそろ終盤戦に入ってきた。一次通過可能性のあるものとないものを山で分けているが、前者が定数の4倍ある。このあとまだ読むので、候補の中から5作に1つぐらいを選ぶ作業が最後に発生する。そこが責任を感じていちばん悩むところだ。今日は終了。おやすみなさい。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 1, 2018
新人賞下読みラストスパート。他の意見もあるとは思うが、ミステリー新人賞応募原稿の梗概は解決篇まで書くべきだと考えている。謎解きでいえば、wno,how,whyの要素のうち二つまでは明かし、最後の一つだけを曖昧にする。その解決までどのように辿りつくかというのも評価ポイントになるからだ。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 2, 2018
新人賞下読みラストスパート。梗概があるのでネタばらしをされた状態で応募原稿は読む。建築士から設計図を渡された施工主が、ここはこういう風に作るのか、こんな部品か、と確認しながら家を点検するのに近い。稀に設計図からの想像をはるかに上回る完成品にぶつかることがある。だいたい受賞する。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 2, 2018
新人賞下読みラストスパート。ものすごく残念な作品。物語の結末にあまり知られていないある事実を使ってどんでん返しが仕掛けられていると梗概にあり期待しながら読んだ。でも、その知識を単に披露しただけでおしまい。そうじゃないんだ。教えてほしいんじゃなくて、それをどう使うかを知りたいんだ。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 2, 2018
新人賞下読みラストスパート完了。応募作担当分は全部読み終えた。ここから残すものを決めるのだが、判断に迷う案件があって何作か再読しなければならない。いずれにせよ複数作は自分の箱から残せそうだ。受賞作が出るかどうかは難しいが、たぶん最終選考までは残りそう。健闘を祈ります。
— 杉江松恋@『博麗霊夢にありがとう』 (@from41tohomania) July 2, 2018
以上である。ツイートはもちろん応募作の内容そのままではないので、これを読んでもどの作品かは特定できないはずだ。たとえ著者であっても。今回の担当分はけっこう水準が高かったように思う。通過した方の健闘を祈る。
これは余談なのだが、出版社から送られてくる下読み箱にはいろいろな種類がある。
今は応募をデータ送付のみに限定しているところもあるので、そういう版元の箱はすべて原稿がA4に揃っている。以前はそうではなく、B4の原稿用紙のものがあったり、バインダーで綴じているものがあったり、さまざまだった。いっぺんだけだが、製本済みのものが送ってきたこともあった。自費出版か、同人誌として出したものなのだと思うが、あれはさすがに応募段階で落としてもよかったのではないだろうか。
サイズを別にすれば原稿は以下の二つに分かれる。
1)封筒に入っている。
2)封筒に入っていない。
多いのは1)なのだが、2)も存在する。A3が入る箱に、A4原稿を並べて2つ入れてくるわけだ。別にかまわないのだが、取り出すときや戻すときに紙が破れることが多く、ちょっと困る。
原稿の入れ方にもいろいろある。
A)びっしり詰める。
B)箱に余裕がある。
A)の場合は、とにかくびっしり、隙間がないようにうんしょうんしょと詰めてある。1)の封筒に入っている場合なら、これがいちばん望ましい。多少乱暴に扱っても破れるのは封筒だけだし。B)は、複数の箱を送ってこられると困ることがある。積み重ねて置いておくと、隙間のほうに崩れることがあるからだ。ただし、A)も箱の大きさによってはちょっと難儀する。某社はA4コピー用紙の箱に原稿を入れて送ってくるのである(他社の箱はもっと大きい)。廃物利用になるし、いいと思うのだが、A4の原稿の束を同じサイズの箱に入れるのは難しく、3箱送ってきたのに戻し方によっては元に戻らなくなることもある。某社限定で、ちょっとだけ箱に余裕を作っていただけるとありがたいのだが。
某社関係者にしか伝わらないお願いであった。