杉江松恋不善閑居 第160回芥川・直木賞の夜

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「あなたはまだ本を増やそうというわけ」

呆れたように豊崎由美さんに言われた。

まあ、見るだけ、見るだけ。

昨日、1月16日には第160回芥川賞・直木賞選考会があった。

最近の恒例として、下北沢B&Bでライブビューイングのイベントがある。井上トシユキ・栗原裕一郎・荻野ペリー三氏が出演される生中継があるが、それをお客さんと一緒に観ながら、メッタ斬りコンビの豊崎由美・大森望両氏と私があれこれ注文をつけようというわけである。両賞記者発表の会場に三氏が間借りする形で中継をして、その放送の片隅に我々がさらに入り込んでいるわけだから、間借りの間借りだ。なんとも珍妙である。

で、今回の問題点は選考会がいつもの午後五時開始から繰り上がり、午後四時になったTことである。ニコ生の番組も午後五時から始まるから、我々も同じ時間から開演にしようという。え、それは別に構わないけど、お客さんは構うんじゃないの。午後五時にそんな酔狂なイベントに来ようなんてお客さんはいないんじゃ。いや、いるかもしれないけど、午後五時じゃ来られないでしょう。

事情を聞いたら、いつもは新喜楽で食事をしながら選考会をするのだが、それだと落ち着かないので、選考会を済ませてからゆっくり食べようという話になったのだとか。

飯の都合かよ。

「そんなの食事は後日にすればいいじゃない。選考委員の人と新受賞者と、ゆっくりお話ししながらご飯食べたらいいでしょ」

と豊崎さん。もっともだ。

早めに終わらせて午後七時のニュースに間に合わせたいのかな、と好意的に解釈していたのに。

もう一度言うけど、飯の都合かよ。

それでも五時だというのである。言われたとおりに行ってみると、まあ、大入りもいいところで、現場の模様を取材させてください、と意気込んでやってきたNHK「ニュースウォッチ9」の取材班のみなさんもうろたえている。そうだろう。「現場は賞決定を待つお客さんの熱気が渦を巻いております」とは間違っても言えない状況だったのだから。だから午後五時は無茶だと言ったのに。NHKさんには言い訳になるのだけど、いつもはもっと入るんです。本当だよ。

何人でもお客さんがいる限りは喋るのだ、とつつがなく進行していると、突如珍客が。芥川賞の候補になっていた高山羽根子さんがいらっしゃったのだ。近くで待ち会をされていたが、結果がわかったので中抜けしてB&Bを覗いてくださったのだとか。もう、NHKさんの喜ぶこと喜ぶこと。本来は出演予定のなかった候補作家がふらっと現れたのだから、飛んで火に入る夏の虫とはこのことである。急遽実現したインタビュー取材は、無事に9時の番組で放送されたらしい。その時間は下北沢にいたんで、観てないんだけど。

番組終了後、その高山さんの残念会に顔を出させてもらった。店に着くと、人数が増えると手狭になるので、場所を替えて二次会にしようという。

「あ、じゃあ、その間古本屋に行ってきていいですか」

名店・ほん吉が近所で午後九時まで開いているわけである。あなただったら行かないか。そのぽっかり空いた時間に。行くでしょう。私は行く。

豊崎さんに「まだ本を増やす気なのか」と呆れられたけど。いえ、増えないんです。単なる眼福。

というわけでほん吉。特に何も買わず。芸能関係で良い本があったのだけど、予算が折り合わなかった。ゼロが一つ無かったら、買ったんだけどな。

近所で二次会。その模様は省略。混ぜていただき、ありがとうございました。酔狂すぎるイベントに来ていただいたお客様にもお礼申し上げます。次はやっぱり午後六時からにしましょうね。

ほん吉前にて。均一棚がけっこう充実しているのです、ここは。

居た場所

高山羽根子さん初の芥川賞候補作。おもしろいですよ。

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