街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年2月シンガポール「永新書局」ほか

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シンガポール動物園のアイドル・イヌカの在りし日の姿

二月某日

シンガポールに友人が滞在していて、こっちに住んでいる間に訪ねてこいと言われていた。そこで今年の二月に行ってきたのである。日程を検討していたら友人から連絡があった。二月は春節があるが、帰省する中国人が多いので人出が多く、入国管理がうるさくなる。その時期は外したらどうか、ということであった。

ふむふむなるほど。ご助言感謝である。あなたは密輸人に見えそうだから気をつけろ、と言われているみたいで少々ひっかかったが、その通りにすることにした。二月の某週、土日をひっかけてのお出かけである。

シンガポールに行ったのはほぼ十年ぶりくらいで、シンガポール動物園で蛇を見たり、シンガポール動物園で猿を見たり、シンガポール動物園で河馬を見たりしてえらく楽しかったのだが、それはまた後日。同園のアイドルだった白熊が亡くなったばかりらしく、周辺が閉鎖されていて若干淋しかった。

それはともかく、シンガポールにもやはり古本屋はあるであろう。家族で行ったのだが、妻は友人と共におしゃれな店に行って楽しむそうなので、同日同刻、こちらは文化の香りを嗅ぐために街を散策することにした。友人によれば、シンガポール図書館にはどっさり本があって涼みに行くのもいいということである。ネットで調べてみたところ、そのすぐそばに古本屋が密集しているビルがあることがわかった。あれか。神保町古書センターみたいなものか。

外観はまったく違う。五階建てのオフィスビルで、一階には地元の人向けのフードコートが入っている。中庭があり、その上の吹き抜けを囲む形で店舗が配列されているのだ。複数階にPOP centralというCDなども扱う総合書店が入っており、書店ビルという見立ては外れていないようだ。

#01-07 Bras Basah Complex 231 Bain Street Singapore 180231

まずは一階。通りに面した側を入っていくと、中庭に沿って書城音楽書局(Music Book Room)や文房具売りが主だが古い本や雑誌なども扱う勝友書局(Sen You Book Store)がある。

二階では美術書や写真集中心のBasheer Graphic Booksがまず目を惹く。入ってすぐ右の付近にサブカルチャー関係のものが多く、特撮や漫画関係のものが豊富に取り揃えられていた。日本から入ってきた古書も結構多かったが、やはり言葉と関係なく目を通すことができるからだろうか。もちろんアメコミや海外特撮関係のものも多く、胸が躍る。

Basheer Graphic Storeとは吹き抜けを挟んで九十度くらいの位置関係にあるのが、Knowiedge Book Centreだ。ここで特徴的なのは店頭に白っぽい印刷物が置かれたラックがあることで、近くの大学などの過去問らしい。店内に多いのも教科書系の本だ。いわゆる学生街の古書店というやつだろう。店頭には均一棚などもある。

同じビル内にあるはずだが、ちょっと階数の自信がないのが永新書局(Everynew Bookstore)で、時間がないけどとりあえず文学書や地元出版の古書を漁ってみたい、という方にはここに行くことをお勧めする。中央の列が文学書になっていて、アルファベット順に各言語圏の作家の古書が並んでおり、壮観であった。ミュリエル・スパークあたりの本がたくさん置いてあるし、地元の怪談集など、他ではあまり見かけなかった本を手に取ることができたのもここだった。写真を撮り忘れたが、このビル内には他にも児童書専門店や、ペイパーバックを縦ではなく横に積んである店(いつも思うのだが、そのほうがタイトルを見やすくないだろうか)があり、かなり長い時間滞在できた。新刊書店のPOP centralにはシンガポールや台湾のミニコミ誌の棚もあるし、中古レコードのコーナーなどもあって楽しめる。

検索してみたらシンガポールの古本屋を紹介したサイトがあった。五軒紹介されているうちの二軒がこのビルの中にある。

二月某日

その他のあれこれ。地下鉄シティホール駅を出てすぐのところにFunan Digitalife Mallというビル一つが秋葉原みたいな建物があり、その五階がフィギュアなどが並ぶオタク向きフロアになっているという噂を聞いていたので行ってみたのだが、二月のその時点ではリニューアルのため全館閉鎖になっていた。中を完全に入れ替えるような雰囲気だったので、改装が終わった後も同じようなオタク向けの場所が残っているかどうかはわからない。

もう一ヶ所、老舗のショッピングモールにも行ってみた。地下鉄のドビー・ゴート駅に直結しているプラザ・シンガプーラで、ここは十年以上前に来たときにも寄った記憶がある。調べると七階にそういう店が集まっているそうなのだが、行ってみるとなるほど、どこかで見たような景色が広がっていた。台北駅の地下街にあったやつの縮小版だ。シンガポールで唯一の脱出ゲーム専門店と謳った店やゲームセンターの向かい側に、アニメやコミック関連の店が数軒ある。いくつかひやかしてみたが、こういうところに来ると日本から流れてきた当時のおもちゃが並べられていて、タイムスリップしたような気分になる。値付けは当然だが、若干高めである。中でも異彩を放つのがCaesarで、ここは武器専門店である。といっても刃引きをしてある、コスプレイヤーが持つようなものだろう。店内の雰囲気は重々しく、戦士が本当に武器を品定めしに来たような気分になれる。

この他ベンクーレンやチャイナタウンなどに有名なオタクビルがあったはずなのだが、残念ながら時間がなくて足を延ばせず。機会があったら、次回は挑戦してみたい。また、おもちゃ絡みでおもしろい発見があったので、それは稿を改めて別のときに書くことにする。

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