街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年7月・横須賀中央「AMIS」「沙羅書房」

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市川書店が発見できなかった若松マーケットは、横須賀ブラジャーなるものを今推奨しています。ブランデーをジンジャーエールで割ったものらしい。

7月某日。

前日、県立大学の港文堂書店に来たばかりであったのだが、隣駅の横須賀中央にいる。月曜日定休で中に入れなかった未訪店に行くためである。とんだ二度手間だったが、まだ見ぬ古本屋との出会いがあるのであれば、まったく苦にならない。むしろ二回わくわくさせてくれてありがとう、と言いたい。三回はいやなので、ぜひ今日訪問したいのだけど。

目的の店は駅の山側にあるのだが、まずは繁華街のほうを歩く。ここの若松飲食街(現・若松マーケット)に市川書店という古本屋があったはずなので、その現状を確認しに行くのだ。市川書店は縁日の露店が常態化したようなところで、狭い敷地にみっしりと本が並べられていた。そう、並べられていた、と言ったほうが正しい。記憶に頼って歩いてみたが、見つけることはできなかった。最近になってここは綺麗に整備され、観光客向けにアピールする看板などもつけられるようになったので、そのあたりで撤退したのかもしれない。もしかすると私が見つけられなかっただけで店は営業しているのかもしれないが、二回りして発見できなかったこともあり、ひとまず心の中では一区切りつけることにした。

さて、新店舗である。駅の西側は急な坂になっている。これをえっちらおっちら登って行き、最初の信号で右に曲がる。そこからしばらく行った先にあるのが、古書・ビジュアル洋書販売と書かれた看板の出ているAMISだ。BOOKS&COFFEEとあり、店の一画でコーヒーも飲めるようになっている。

AMIS。ここは月曜日定休だった。

店の前面は開放的な作りになっており、均一棚というわけでもなく、むしろ看板商品を見せつけるような風情で並べられた美術書が印象的である。左側に均一棚が固まっていて、ここにはハヤカワ・ミステリなどもある。

中に入ると、左側が神奈川県の地元や郷土史、さらに旅行関係の本が多い地帯である。右側は芸術書関連ということで、仁王像のような両側の専門棚を入ると中に文学棚がある。ここの配置も通り一遍の分類ではなく、確固とした信念と傾向によって本が配置されていることがわかる。私は詳しくないので真価のわからない、美術書もここの売り物であろう。見ているだけで楽しい店内ではあるのだが、何しろ蒸し暑いのである。エアコンはあるが起動している様子はなく、帳場では店主が団扇を優雅に使っておられる。あまり長居はできないと観念した。とりあえず今回はご挨拶程度ということで、店頭の均一棚からエリオット・ウェスト『夜は耳をすますとき』(ハヤカワ・ミステリ。持っている気がする)と、ご当地棚から、神奈川新聞社の出しているかもめ文庫の一冊、高橋誠一『かながわの銭湯』を手に取る。ゆっくり探せばまだ発見がありそうなので他日を期して店を後にした。

さて宿題の答え合わせをもう一つ。先ほど右折した信号を真っ直ぐ行ったところに老舗の沙羅書房がある。前日に訪ねたときはシャッターが下りていた。某所で聞いた噂ではすでに店舗営業をしていないということだったのだが、やはりちゃんと自分の目で確かめる必要がある。念のためもう一度、と再び足を運ぶと、なんとシャッターが開いているではないか。

沙羅書房、ちゃんと営業している。

うっかりと決めつけてすみませんでした、と自分を叱りつけ、お店を見せてもらう。沙羅書房は横長の作りで、元から奥行きがそれほどない。カウンターだけのラーメン屋みたいなものなのだが、現在はその奥も積まれた本で侵入不可能になっており、中心の柱の周辺二ヶ所しか中を見ることはできないのである。しかし見どころはたくさんある。柱周辺に置かれた紙ものと旧い雑誌はぱっと見ただけでも買ってもいいだけの掘り出し物があったし、帳場脇の郷土史本は充実している。あまり見かけないようなものもあり、これまた掘り甲斐がありそうである。

結局買ったのは池田弥三郎『町ッ子土地ッ子銀座ッ子』である。三月書房のこの正方形に近い独特の製本されたエッセイシリーズは、見かけたら安ければ買うようにしている。もう一冊は福田蘭堂『蘭堂釣り自伝 サオをかついで世界漫遊』(グリーンアロー出版社)だ。蘭堂は尺八奏者だが、随筆家としても人気があった。その著書はすべて絶版であり、今後再刊の機会もそうあるまい。一種の芸人本として手元に置くことにした。

二軒まわって計四冊。悪くはない。麓に下り、ヨコスカベーカリーでパンを買って帰路に就く。横須賀中央、二軒が健在であることを確認できた意義ある一日だった。

沙羅書房。奥行きはないが品ぞろえはおもしろい。

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