9月某日
本当は朝から木馬亭の浪曲に行くつもりだったのだが、逆算してみて仕事がもろもろ間に合わないことに気づく。やむをえず夕刻まで自宅で作業である。夜は新宿住友ビルで、朝日カルチャーの講師なので、18時までには着いていないといけない。逆算するとそんなに時間がないな。そう思いつつも念のため日本の古本屋サイトを開けて調べると、吉祥寺パルコ古本市がまだ開催中であることに気づいた(9月16日まで)。現金なもので、次の瞬間には吉祥寺駅の北口に立っていたのである。一種のテレポーテーションに近い。
朝からどんより曇っていた天の底がついに破れて激しい夕立となった。駅からパルコまで指呼の間だが、やむをえず傘を買う。地下二階にアップリンクのシアターが入ったパルコの、その上階で古本市は開催されている。エスカレーターを下りると、すぐ裏側が会場になっていた。
■吉祥寺で大急ぎで巡回
ざっと素見して歩く。どうも見た本が多いのは、先日のひばりヶ丘古本市と出店者が共通しているからだろう。欲しかったのだけど予算が折り合わず諦めた井原高忠の本がまたある。「これは〇〇円だろう」と呟きながら開くと、まさにその通りの値札が貼ってある。
全体的に美術・芸術書や絵本、映画関係などが強い印象の古本市である。開催期間が長いので、途中入れ替えもあるのだろう。とりあえず見たことに満足し、空手でパルコを出る。時刻を見ると、17時をまわったところだった。住友ビルまでは電車移動も含めて30分、あとちょっとだけ時間がある。となると、どの古本屋に行くか、だ。いちばん近い古書百年は火曜日なので系列店のichinichiと共にお休み。よみた屋一本で行く手もあるが、あそこはうっかりはまると30分では戻れない可能性がある。となると、駅周辺の店だけをぱっぱっと見て歩くか。
というわけで北口アーケードの中にある外口書店にまず赴く。屋根があるので傘を差さずに済む。数多ある吉祥寺の古本屋の中でも、学生時代からだから最も付き合いの長い店だ。とりあえず店頭の均一棚に、私の著書である某文庫がまだあることを確認した。前回来たときからずっとあるので、売れていないのである。うむ。誰かに買ってもらえ。
駅の下を通り抜けて公園口に。これまた付き合いの長い古本センターに。特撮関係のムックにやや心動かされるものがあったが、今日は古本を買わないと決めた日なのでちょっとやそっとのことでは手を出さないのだ。
あともう一軒。同じ並びにあるバサラブックスで時間切れだ。サブカルチャーに強い店で、古典芸能関係の本などを何冊か買ったことがある。細長い店内をざざざっと見て歩いた。よし、何もなし。これで本を増やさずに帰れる、と思ったら文学棚で『J・ウェイン短篇集』を発見してしまった。1990年代に新装版で復刊されているが、これは1970年代に出た元版だ。値段を確かめると、安い。これはやむを得ないところだろう。
お金を払って本を受け取る。帳場の人がごそごそと何かしていたと思ったら、雨の日なのでビニール袋を二重にしてくれていたのだ。ありがたい心遣いである。
今週のweb本の雑誌で書くつもりの某ミステリーを読みながら新宿へ。朝日カルチャーで仕事を終えたあと、受講者の方たちに誘われて、しばし近所の居酒屋で歓談した。そこそこに仕事もしたし、そこそこに充実した一日。