街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年8月・高雄「尚昇旧書店」

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尚昇旧書店と私。

8月某日

8月は休暇をとって台湾に行っていたのであった。滞在していたのは高雄市で、動きやすい美麗島(Formosa Boulevard)駅に近くに泊まっていた。フォルモサとは、欧米圏における台湾の愛称だ。この地下鉄駅はステンドグラスを用いたドーム型の屋根が美しく、毎日午後6時になるとそれが点灯するパフォーマンスがある。

高雄では少し離れた港町の東港に行って魚市場を見物したり、客家の町である美濃を訪ねたりしていた。それはまた、別の機会に。私が前に高雄を訪れたのは、たぶん十年以上は前のことだと思う。そのときはまだ地下鉄もなかったが、今では市内に欠かせない足になっていて、高捷少女なるキャラクターまで作られて親しまれている。私が訪れたときはちょうど日本生まれのヴォーカロイドたちと高捷少女のコラボレーションが行われていた時期で、初音ミクもさかんに営業をがんばっていたのであった。

台湾だろうがなんだろうが、行ければ古本屋には足を運ぶ。台湾語では古本屋は「二手書店」である。二手はsecond handの訳だろう。グーグルマップで二手書店と入れてみると、そう多くはないがぽちぽちと市内に店舗が散在しているのがわかる。初日、ホテルにチェックインしたあとで早速一軒を訪ねてみることにした。ホテル近くの尚昇旧書店である。

有名な六合観光夜市が開かれる通りを越えて、北西に歩いていく。七賢二路沿いに店はあった。

店の作りは日本のそれと似ているが、大きな違いは中央に平台があって、そこに雑誌や雑本が堆く積まれていることであった。この感じは日本の古本屋にはあまりない。できれば高雄の郷土本のようなものを見つけたいと思ってしばらく棚前を逍遥していたら、女性の店主が不審に思ったのか話しかけてきた。紙を出してもらい、筆談する。とりあえず「高雄民俗」「高雄歴史」などと書くと、難しい顔をして案内される。こっちの訊き方が悪かったはずなのだが、だいたい言っていることは伝わったような気がした。しかし、買えるようなものはない。

そうだ、地図が欲しい。

街は少し見ないと大きく変わってしまうので、以前の地図があると旧風を懐かしむのに役に立つ。「地図」と書くと、女性は頷いて、いくつかの市街地図を持ってきてくれた。その一つを買うことにする。「これはいつ頃の刊行ですか」と訊ねたのだが返ってきたのは「高雄舊地図」、つまり高雄の旧い地図です、という答えだった。いや、それは知ってます。

女性は読み方を教えてくれる。ガオシン・ティー・ティートゥー、と私には聞こえた。間違っているかもしれない。ガオシン・ティー・ティートゥーと口の中で繰り返しながらホテルに歩いて帰る。

地図を買った。たしか、日本円で200円ぐらい。

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