10月某日
午前3時までかかってエキレビ!の原稿を終わらせ、ついでにYouTubeの編集も終わらせて寝る。6時には起きて東京ビッグサイトに向かわないといけないのである。
案の定ほとんど寝られずに電車に乗ることになり、申し訳ないことに10分遅刻。いつも手伝いをしてくださるほむきちさんと国際展示場駅前で待ち合わせする。こちらがあまりにふらふらしているのを見かねてか、ほむさんが「ロッテリアでコーヒーを買っておいたほうがいいのではないですか」と忠告してくれた。まったくそのとおりですね。
ビッグサイトに到着。しばらく来ない間に南ホールが完成公開されている。西ホールでのイベント参加は五月の例大祭に続いて二回目だ。東ホールに体が慣れているので、いまだにちょっと違和感がある。早めに設営を完了させ、10時半の開始までひたすら、ガチンコ浪曲教室の素材音源を聴きまくる。
イベント自体は特筆すべきこともなし。そこそこよく売れたのと、とらのあなが直接やってきて、委託分の本を持っていってくれたので、帰りに送る段ボールが1つ分減ったのが嬉しかった。よくやった、とらのあな。間もなく委託も始まるので、みなさん買ってください。
例大祭のあとはほむさんと軽く打ち上げをするのが常なのだが、時計を見るとまだ3時40分である。言うまでもなくお店が開くのにはちょっと早い。
「あの、ちょっとお願いをしてもいいですか。今から上野広小路まで行ってもいいでしょうか」
「ええ、私はどこでもいいですが、そこで何が」
「上野広小路亭の古本まつりが、今日までなのです」
「え、ま、間に合いますか」
「大丈夫です。最後の10分に滑り込めれば、私は満足なのです」
嫌がるほむさんを連れて、ゆりかもめに乗る。新橋まで行って銀座線で上野広小路へ。本当は逆に、豊洲まで行って有楽町線と大江戸線を経由して御徒町まで行ったほうが数十円安くて早かったようなのだが、徹夜明けだからそんなことまで頭が回らないのだ。
希望通り、16時40分に上野広小路亭に到着。二ヶ月毎に開催されている古本市だが、今回はハヤカワ・ミステリの均一棚がなくなっているなど、微妙な変化があった。それでも古典芸能系の本が充実しているのが嬉しい。棚の下に小沢昭一他監修の〈芸双書〉を見つける。この中の浪花節特集『うなる』だけがとりあえず欲しいのだ。揃いかと思ったら、なんとバラ売りだった。しかも安い。来てよかった。ほむきちさん付き合ってくれたありがとう。
「お腹空いたでしょう」
「そうですね。なんでもいける感じです」
「もしよかったら、いつも行く居酒屋がこのへんにありますんで」
うろうろと目指すのはおなじみ加賀屋である。が、歩いても歩いても見なれた地下に下りる階段が見つからない。別の店舗の加賀屋はあったのだが。
「うーん、ここは加賀屋だけど知ってる加賀屋じゃないんですよね。中はどうせ同じだと思うんですが。どうしてもあの加賀屋に着けない。街が明るくて様子が違うんですよね」
「街が暗くて道を間違えた、というのはありますが、明るくてというのは珍しいですね」
「いつも落語会の帰りとかに来ますから、暗いんですよ。開いている店が多くて別の街みたいに見えます」
入ってみたら、席がボックス式になっている以外はいつもの加賀屋だった。しばらく本の話などして解散。