某月某日
木馬亭定期公演六日目。延び延びになっていた伊丹秀敏さんの祝85歳記念公園が7月25日(土)開催で確定とのこと。木馬亭である。開演時刻はちゃんと確かめてないけど、延期前と同じだったら13時かな。その伊丹秀敏さんが浪曲師・浜乃一舟としても出演する日。
馬子唄しぐれ 東家三可子・東家美
水戸黄門漫遊記・尼崎の巻 港家小そめ・玉川みね子
長兵衛生い立ち 東家孝太郎・伊丹明
三日の娑婆 浜乃一舟・東家美
仲入り
阿武松 玉川太福・玉川みね子
大岡政談 人情匙加減 神田山緑
巡礼おつる 阿波の鳴門 三門柳・伊丹明
円蔵恋慕唄 東家三楽・伊丹秀敏
「長兵衛生い立ち」は幡随院長兵衛ものの第一話だ。孝太郎さんは幡随院ものの連続読みをやられる予定のはずだが、無事に開催できることを祈る。初めて聴いたのはもう一席「阿波の鳴門」。飢饉対策を行ったが悪人のために幕法に背く罪人となってしまった夫婦が徳島に我が子を残して逃亡の旅に出る。その我が子が父母恋しさに巡礼となって国を出てきてしまい、偶然の出会いを果たす、という話。連れていけば自分たちと同じ大罪人、しかし一心に父母を慕う我が子を置いていかれようか、という母の葛藤が見事に表されており、聴く者の胸を打つ。
他は何度目かに聴いたネタで、なんといっても「三日の娑婆」である。人を殺めた男が牢に入っている間に、父が息子の妻を他の男に嫁がせる。幼い子を父なしにしないためだ。しかし明暦の大火で牢が解き放ちとなり、三日の猶予を与えられて男は娑婆に出てくる。そこで妻子と出会ってしまうのである。基本的に善人しか出てこない話なので聴いていて気持ちいい。好きなのは、再会を果たした息子夫婦がこのまま手をとって逃亡しようか、と悪い相談をしているところへ、おやじが「戸を蹴破って」飛び込んでくるところ。ワイルドだぜ、おやじ。「アー」の口から放出される一舟ビームを浴びるために、この日は正面の席に座った。正解。
「阿武松」は落語とほぼ同じなのだが、なぜか能登に帰るはずの阿武松が中山道ではなくて東海道へ行ってしまい、川崎の手前で六合の渡しに投宿するのが玉川流。聴くたびにまた東海道に行った、と思うので演者がそのつど「涙にくれていたので間違えたのか」などと説明するのも可笑しい。
「円蔵恋慕唄」は三楽さんの十八番だが、木馬亭で聴くのは二年ぶりぐらいかもしれない。弟子に教えたネタなので、演じる機会を絞っているのだろうか。円蔵の大人の恋心がうまく表現されていて、最後に微かながら希望もあって後味がいい。
この日ひさしぶりだったのは小そめさんで、たぶん3月に高円寺ハコの会で聴いて以来である。二日連続の出番で、楽日にはいよいよ玉川祐子さんに弾いてもらう。これは聴かなければなるまい。