翻訳ミステリーマストリード補遺(25/100) デイヴィッド・グーディス『ピアニストを撃て』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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それをノワールと呼ぶか否かはさておいて、1950年代アメリカ犯罪小説の代表格といえるグーディスは絶対一冊入れなければいけないと決めていました。彼の肖像についてはお二人が紹介してくださったのであえて繰り返しません。作品を見れば、読者の予想を裏切るプロット、内部に闇を抱えたキャラクター(逢坂剛氏がグーディスの『深夜特捜隊』を偏愛していることは有名ですが、歪みのあるキャラクターの投入によって物語が大きく動くという創作法のお手本のような小説です)、全篇に漂う虚無や絶望の感覚など、現代犯罪小説の祖形がここにあることは明らかです。ミステリー史を振り返ったとき、1950年代から1960年代半ばにかけての15年間で大西洋の東西において書かれた作品が後世にどのような影響を及ぼしたかは、もっと詳しく検証されるべきだと思っています。その意味でハヤカワ・ミステリから未訳のグーディスが刊行されたことはたいへん有益だったと思いますが、現在もっとも入手しにくくなっている『華麗なる大泥棒』もどこかで復刊が叶えば本当に喜ばしい。

『ピアニストを撃て』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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