翻訳ミステリーマストリード補遺(31/100) ディック・フランシス『大穴』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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ディック・フランシスは巻き込まれ型スリラーの天才であったと思います。『マストリード』では一冊読むと後引きでシッド・ハレーものの続篇にも必ず手を出したくなるだろうということで『大穴』を選びましたが、彼の作品はシリーズ・キャラクターを必要としないプロットの強さを持っています。毎回違った難事の中に主人公を投げ込むことにより、鮮度のある物語を読者に与え続けたのがフランシスという作家でした。彼の作品を読んだ人が中毒になる理由もわかります。毎回違っていて、しかししっかりとディック・フランシスなのですから。ミステリーというジャンルには結末のサプライズ、謎の牽引力、推理ゲームの駆け引きなど、さまざまな要素が含まれています。その中でも先の読めない物語展開を最も大事にしたのがディック・フランシスという作家でした。これから作家を目指す人には、ぜひ彼の作品を読んでお手本にしてもらいたいと思います。

『大穴』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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