翻訳ミステリーマストリード補遺(42/100) ジャック・ヒギンズ『死にゆく者への祈り』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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ジャック・ヒギンズは英国冒険小説の一典型として『マストリード』に入れなければ、と考えていました。昨今の冒険小説不遇状況の中でもさすがに『鷲は舞い降りた』と『死にゆく者への祈り』の在庫はありました。大作感のある前者ではなくて地味な作りの本書を選んだ理由は、よく覚えていません。もしかすると『鷲は舞い降りた』が1975年の元版ではなくて、大幅に加筆が行われた完全版だったからかもしれません。私は引き締まった元版の方が好きなのです。これは好みの問題なので、もちろん『鷲は舞い降りた』もお薦めできる作品です。

ヒギンズは国際情勢を状況設定に取り入れ、困難に立ち向かう主人公の英雄像を際立たせて書くことが得意な作家でした。第二次世界大戦を背景に使ったもの、そしてIRA問題というイングランドとアイルランドにとっての宿痾を扱った作品に秀作が特に多いように思います。残念なことに現在ではほとんどが絶版なのですが、近年は電子書籍で復活しているものもあるので、この動きがもっと活発になればいいと考えています。お読みになるとすれば上記の2作以外でしたら、やはり1970年代に書かれた作品をまず手に取られるのがいいかと思います。

『死にゆく者への祈り』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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