翻訳ミステリーマストリード補遺(46/100) ジェフリー・アーチャー『百万ドルをとり返せ!』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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本文中にもありましたが「コン・ゲーム」のおもしろさを日本に伝えた作品は、映画「スティング」と本書であろうと思います。犯罪小説でも特に知的好奇心をそそるサブジャンルであるコン・ゲーム小説の代表格として本書を収録しました。私が読んだのは1976年に発表された元版なのですが、実はこの作品、後年になって作者自身が改稿しており、現行の新潮文庫はそちらの新版が流通しています。アーチャーは若書きだったと感じたのか物語の細部に手を加えており、全体の筋は変わらないものの、小さな展開が異なる箇所がいくつかあります。気になる方は読み比べてみてください。

コン・ゲーム小説の諸作については『マストリード』でもタイトルを挙げて紹介しました。基本的には「暴力を用いず知力で敵の裏をかいて勝つ」がこのジャンルの基本だと思っています。敵を欺すための語りは騙りにつながります。つまり、事態の推移を見守る読者にも詐欺の相手と同じように偽りの展開に引っかかってもらわなければならず、そこで叙述に裏と表の二重性が生まれるのです。騙りの技術に定評のあるジェフリー・ディーヴァーのような作家を産んだ源泉の一つは、コン・ゲーム小説だったのではないでしょうか。ディーヴァーの短篇集中には、これぞコン・ゲーム小説、と言いたくなるような作品が多数ありますので、よかったらそちらもご確認ください。

『百万ドルをとり返せ!』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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