某月某日
今抱えている仕事。インタビューの構成×3(イレギュラー2、文庫解説1)、レギュラー原稿×4。イレギュラー原稿×2(調整待ち、書評)、ProjectTY書き下ろし。下読み×2。
やらなければならないこと。主催する会の準備×1。
東京は積雪があるという報道だったが、私の住んでいる付近はみぞれ交じりの雨で終わった。一日文庫解説を書いていて、他のことはあまりしていない。1本仕事が終わったが、レギュラー原稿の〆切が1つ来たので増減はなしである。この三連休はひたすら仕事だが、本日は17時半会場の玉川太福さん独演会で『浪曲は蘇る』を販売させていただけることになっているので浅草木馬亭に伺う。既にご購入されている方も、もしご希望があれば署名をお入れするので会場でお声がけください。太福さんもお時間があれば応じてくださるはず。
雪は積もらなかったが、仕事は積み上がっている。家族にもしばしば言われることだが、私は貧乏性なので目の前に仕事がないと不安になる。何もなくて気が楽だと思ったことはこの職業になってから一度もない。
ありがたいことに仕事の注文は途絶えずにいただけている。ほぼ断らない。お断りしたことは、この十年で幾度もないはずである。
以前は、若いうちは仕事を断らず何でも受けたほうがいいと考えていた。最近は変わって、若いうちだからこそ選んだほうがいいと思っている。よく吟味しないと、無駄なこと、ろくでもない仕事で時間を浪費しかねない。変なレッテルを貼られてしまうと、以降の仕事にも差し支える。ある程度知名度が上がり、その業界の中で地位も確立してしまえば、逆に先方から仕事を選んで依頼してくるようになる。おかしなことは回ってこなくなるので、選ばずに何でも受けて問題なくなるのだ。若いうちは選んで、年を取ったら選ぶな、というのが正解なのだ。なんでもかんでもえり好みして受けない、というのは問題だとは思うが。
この筆名を使い始めて三十年ぐらい経つのだが、ごく駆け出しのころに某週刊誌から突撃取材みたいな仕事がきたことを思い出す。あれはどういう経緯で来たのだろうか。詳細は忘れてしまったが、とにかく体力は使う必要がある仕事だった。そうそう、周りにいる人に頼んで何かをしてもらうという話だったきもする。生命保険の契約をまず親戚縁者から取るようなものか。たぶんあれは、その出版社に来た物書きの卵に片っ端から声をかけていたのだと思う。安かろうまずかろうでも数がいればこなせる内容だった。そういう人海戦術的な仕事を若い者を使ってやらせるようなところなのである。
そんな仕事が自分にできるかわからなかったし、とにかく受けていいかどうかも判断がつかなかったので、業界の先輩に相談した。こういう内容なんですが、受けても大丈夫でしょうか、後でいろいろ不都合なことが起きないでしょうか。その先輩の答えは、若いんだから何でもやったほうがいいんじゃないの、だった。しばらく熟考して、依頼は断った。ついでに、その先輩にも大事なことを相談するのは一切止めた。親切な人かもしれないが、あまり深く物事を考えているようには思えなくなったからだ。この判断は正しかった。
若いうちは仕事を吟味する必要がある。可能であれば、経験者に相談したほうがいいが、相手を間違えるとたいへんなことになる。頼るべき相手は仕事そのものよりも慎重に選ばないと駄目だ。そして年長者は若手からこの種の相談を受けたら、自分も来た道だと思って親身になってやること。それをしてくれない先輩は、縁のない人だと考えて以降は遠ざけて正解である。つきあってもろくなことにならない。