杉江松恋不善閑居 浅草木馬亭三月定席二日目

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×2。イレギュラー原稿×3(調整待ち、エッセイ、文庫解説)、ProjectTY書き下ろし。下読み×1。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

少々寝坊してしまって書き下ろしを進められず、いくつか連絡事項を片付けて浅草へ。

浅草木馬亭三月公演二日目。

寛永三馬術梅花の誉 玉川奈みほ・沢村豊子

神崎与五郎東下り 東家恭太郎・水乃金魚

武田信玄 木村勝千代・沢村まみ

甚五郎旅日記掛川宿 玉川奈々福・沢村豊子

仲入り

天保水滸伝鹿島の棒祭り 玉川太福・玉川みね子

秋色桜 神田茜

矢頭右衛門七 大利根勝子・玉川みね子

紺屋高尾 三門柳・沢村美舟

仲入り明けまで五席連続で関東節という珍しい一日となった。この日最大の収穫は、三門柳の「紺屋高尾」だろう。三門博脚色で、冒頭の恋煩いのくだりを切って、藪井竹庵と吉原に向かうくだりから始まる。お床入りするまえに自分が職人であることをばらす形だが、お引け前、ひきつけで高尾花魁と対面したばかりのところで嘘を吐いていました、と謝る。女心を考えると、たしかにこのほうが惚れる気持ちになりやすいと思う。また、竹庵の視点を使って、高尾がどのように反応するかと観察するのも秀逸。これは会話で構成していく落語よりも、節をナレーション代わりに使える浪曲ならではの工夫だ。最後に高尾が嫁入りしたと江戸っ子に知らせるのを、かわら版の読み売りでやる。節は新内で、さすがは三門博というべき構成である。落語の浪曲化は数あれど、これは最も成功しているのではないだろうか。アンコ盛り沢山の三味線をこなした沢村美舟も見事。

節ではやはり大利根勝子と木村勝千代の古豪組が素晴らしかった。ひさしぶりの「矢頭右衛門七」は言わずもがな。「武田信玄」も以前に聴いたときよりもはるかによく、どうかしちゃうんじゃないかと思うほどこぶしが回りっぱなし。今の木村勝千代は本当に聴きどきです。玉川の二人はケレンたっぷりに。世情が落ち着かないからとあえて笑いで楽しめるネタを、と奈々福。爺さんを演じるときに、軽演劇の呼吸を意識しているな、と感じる。太福は3月9日が鹿島の棒祭りだから玉川がこれをやらないのは、と断ってお家芸に。マクラたっぷりなので最後まで行きつかないかと思わせておいて、無事におしまいまで。3月4日・5日夜は木馬亭で独演会。私も『浪曲は蘇る』物販で参ります。

その他では東家恭太郎「神崎与五郎東下り」が興味深かった。講談では講釈師が来て討ち入りの模様を読むところを、かわら版の読み売りが義士の名前を読み上げる尽くしの形で伝える。ここはさらに盛り上がるところなので、以降が楽しみ。

帰宅後、書き下ろしをなんとかがんばる。現在進捗率73.33%。出遅れたわりにはまずまず。

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