某月某日
今抱えている仕事。レギュラー原稿×2。イレギュラー原稿×3(調整待ち、エッセイ、文庫解説)、ProjectTY書き下ろし。下読み×1。
やらなければならないこと。主催する会の準備×1。
般若肉付きの面 港家柳一・沢村美舟
花の若武者那須与一 富士実子・伊丹けい子
水戸黄門漫遊記散在競争 国本はる乃・沢村美舟
阿波の鳴門 富士琴美・伊丹明
仲入り
鯉淵要人 東家孝太郎・伊丹明
赤垣の婿入り 神田桜子
亀甲組乗り込み 港家小柳丸・沢村美舟
佐倉義民伝宗吾郎妻子別れ 天中軒雲月・沢村豊子
いろいろ抱えているものはあるのだが、天中軒雲月主任日とあれば来なければならない。浅草木馬亭三月定席三日目。「佐倉義民伝」を聴けただけでもう満足。
この日最大の収穫はなんといっても小柳丸さんの「亀甲組乗り込み」で、いつもは木辻の廓前半で終わるのだが、先日の都民寄席で後半をやると約束したとかで、40分を超える熱演であった。最後は河内音頭まで繰り出して盛り上げる、盛り上げる。美舟さんの三味線も冴えて、とにかく驚きの一席だった。乗り込みまで演じるの、初めて聴いた。あまりに長いので、もしかすると雲月さんが急遽休演か、と聴きながら思ったくらいである。その小柳丸の弟子である柳一さんを初めて聴けた。師匠の節を綺麗になぞって、今のところけちのつけようがない出来栄え。ここからどのように自分なりの個性を出していくかが楽しみだ。
初めてといえば、実子さんを弾いた伊丹けい子さんも木馬亭の定席では初めて聴いた。たしか前に、伊丹秀敏記念の会か何かで聴いたことがあるはずだ。まだ自信なさげな音色だったので、どんどん強気に弾いていけるようになればいいな、と思った。この日はお初が多く、孝太郎さんで「鯉淵要人」を聴くのも初めて。桜田門外の変に加わった水戸藩士の友情を描いた話で、途中で落語「井戸の茶碗」的な展開になる。もう一つ初めては桜子さんの義士銘々伝「赤垣の婿入り」である。源蔵が赤垣家に入るまでの話で、上方ネタだという。摂津生まれの桜子さんに合った読物だと思った。もっと上方ものを積極的にやられてもいいかもしれない。
国本はる乃さんが入っているのは澤勇人さんの代演。ぎっくり腰だったとか。
終演後、時間が少しだけ空いたので三河島・稲垣書店を覗きに行くも開いていなかった。もう何年も振られ通しだという気がする。週末しか開けないんだっけ。
池袋まで行って伯爵でコミュニティカレッジ講義の準備。19時から20時半まで講師を勤めて帰ろうとしたとき、異変に気付いた。三省堂書店池袋本店が、2階以上を閉じていた。なので売り場が滅茶苦茶に移動していて、本を探すのに苦労する。神保町本店も縮小してしまうし、なんだか大変なことになっている。急に川崎長太郎が読みたくなり、探して廉価本があることに気づいて購入する。二篇ほど読んで気持ちが安定した。書き下ろしをやっていると物語性云々よりも、こうした文章が好きな作家のものを突発的に読みたくなる。自分の中から日本語の在庫が抜けてしまうので、補充したくなるのだろう。
書き下ろしのほうは少し進んで78.33%。この段階で構成について相談したくなったので編集者に送ってみる。どういう答えが戻ってくるか。それによって違うが、来週には脱稿する見込みだ。