杉江松恋不善閑居 別府・大野書店にて

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×4。イレギュラー原稿×3(エッセイ、文庫解説×2)、ProjectTY書き下ろし。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

週末に所用があって大分県別府市まで出かけた。まだ行ったことがない県の一つである。これで大分には宿泊したので、残るは秋田、鳥取、高知の三県ということになる。ちなみに日帰りで行っただけで宿泊したことがないのは、富山、福井、和歌山、兵庫の四県だと思う。和歌山は幼いころに行ったのでもしかすると泊っているかもしれない。

そんなわけで前日までにある程度仕事を片付けていったのだが、イレギュラー原稿である手違いがあって大幅に時間をとられてしまった。そのせいではないのだが、図書館に注文したつもりの予約が入っていなくて、原稿のための資料本が手に入らず、日曜日になって慌てることになった。まあ、なんとかなるはずだ。

別府でしたことはまた別に書くかもしれない。とにかく書いておくべきは大野書店のことである。グーグルマップで見たら十時から二十時の営業と出ていたが、実際に電話をしてみたところ、十七時までだった。グーグルマップを鵜呑みにしてはいけない。これは世界で最も実践すべき法則の一つである。

大野書店は別府市中心街の海に近い場所にある。バス停で言うと、的ヶ浜公園前がいちばん近いだろう。そこから富士見通りを山のほうに少し遡ったところにある。

十一時少し前に着いたが、定時になっても開かない。そういうことはよくあるので驚かずに読書をしながら待っていると、十五分ほどして、店主がやってきた。「お待たせしてすみません」と言いながらシャッターを開け、店頭棚を出して、どうぞ、と手招きをする。

事前に、郷土資料を置いている別府唯一の古書店と聞いていたが、そうした本は入って右奥にまとまっている。通路は四本、左から文庫や文学系が多い通路、アダルトや文庫の通路、歴史や美術の通路とあって、いちばん右が最も魚影が濃い。入口からだと本が積まれていて通れないのだが、奥の帳場側からまわっていくと見ることができる。ここで藤原審爾『おそい愛』(東邦出版)と川崎長太郎『抹香町』(大日本雄弁会講談社)を見つけた。どういうわけか値付けがされていない。

帳場に持っていくと何やら調べて値段を教えてくれた。いくらいくら、と言って、ここから三割引けるから、と付け加える。聞くと、いちばん右にあるのは通信販売用の在庫にもなっている本で、三割というのはネットに支払う手数料分なのだそうだった。なるほど。納得したのでお金を支払い、外に出る。郷土資料関係は見つからなかったが、なかなかの収穫である。

浪曲は蘇る:玉川福太郎と伝統話芸の栄枯盛衰

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