杉江松恋不善閑居 新潟・古本もやい

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×3。イレギュラー原稿×4(エッセイ、書評、文庫解説×2)、ProjectTY書き下ろし。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

今時書店を出ると最も近いのは礎町の停留所である。そこからバスに乗って二つ、駅前通で降りる。少し引き返して東に進む万代町通りへ。少し行くと道の左側に見慣れた看板が出現する。ラーメン二郎新潟店だ。おお、ここにあったのか。そこからどんどん進んで道の右側にある古本もやいに到着した。

古本もやいも今時書店と同じで、集合型の店だ。万代町通りをさらに進んだ奥に、沼垂テラスという、古い町並みにカフェなど新しい店が入った若者向けに作り替えた商店街がある。その中にFISH ONという古本屋があるのだが、それと同じグループの人たちがやっているのが古本もやいだという。

入口の外、左右に文庫棚、右が現代小説で左が時代小説、どちらもきちんと選んだ感じの本でまず目を惹く。中に入ると目の前にはでんと棚があり、それを迂回して左右に入っていくようになっていた。左に回ると食文化や郷土史、新潟出身作家についての棚がある。右は文芸全般。講談社文芸文庫がずらりと並ぶ棚もある。その壁際の棚と向かい合うようにして漫画などのサブカル棚。奥の棚には大型本が並ぶが、それと相対してミステリー棚もあった。帳場は店の右奥で、その前にある椅子に座って店番の人と話をしている男性がいた。声を聞いて驚く。えのきどいちろうさんにそっくりなのだ。急いで顔を見たが、別人だった。しかし声はそっくりで、喋り方もよく似ている。他人の空似というのがあるが、空声とでもいうのだろうか。その男性の座っている椅子で隠れているところにも棚。さらにその前をって右奥に進むと美術系や漫画などのコーナーがまだ隠れていた。かなり尖鋭的な品ぞろえで、見ていて楽しい。

旅先でなければ買えた本もあったのだが、迷っているうちに時間切れになってしまう。男性と店番の人の会話が漏れ聞こえてくる。「FISH ONというのは開高健の本からとった名前で」、あ、なるほどそういうことなのか。これからそのFISH ONに行くつもりなので、今日はやっているかどうか聞きたいのだが、えのきど声の人との会話を遮るのは悪い気がしたので諦めてそのまま外に出る。

万代町通りをさらに真っすぐ。ずっとずっと行った先に沼垂テラスはあった。長屋風の店舗が今風に改装されていておもしろい。FISH ONは残念ながら開いていなかった。金曜日から日曜日の営業と貼り紙には書かれているのだが。仕方ない。古本屋にはこういうこともある。

諦めて次へ。

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