某月某日
今抱えている仕事。レギュラー原稿×2。イレギュラー原稿×2(エッセイ、評論)、ProjectTY書き下ろし。
やらなければならないこと。主催する会の準備×1。
朝から奮起して文庫解説を1本書いてしまう。余力を駆ってレギュラー原稿も1本。やればできる子。夕刻になって外出し、経堂・さばのゆで開催される立川談四楼独演会に。
山号寺号 縄四楼
大工調べ 談四楼
お見立て 談四楼
談四楼さんの大工調べはひさしぶり。終演後にいろいろ話してほどよい時刻に帰宅。私はPTAを卒業して演芸に戻ってきたとき、談四楼さんから復帰したので落語に関しては第二の親だと思っている。なので定期的に聴かないといけないのである。
大阪の話をもう少し。杉本梁江堂を出た後、扇町から堺筋線で日本橋まで下り、そこから歩くこと約10分、たどり着いたのは瓦屋町の絶版漫画バナナグレープだった。ここに来るのは二度目。最初は11月の東方紅楼夢の帰りであった。そういえば11月のことも書いていなかったか。雑居ビルの4階で、昔の建物だからなのかやたらと天井が低く、ときどき頭をぶつけそうになる。入っていくと限界に挑戦したような状態で棚が林立しており、ところどころに漫画のタワーが。前回来たときにモンキー・パンチやフジオ・プロ出身作家の漫画を捜していることを告げて長話をしたので、今回もそのことなどをあれこれとしゃべる。気が付けば1時間以上話し込んでいた。復刻版の『無敵鋼人ダイターン3』コミックがあったので、それと『銀河鉄道999』最終回掲載時の『週刊少年キング』を購入。『999』というよりも単行本未収録の東京ひよこ『AAO』が目的である。東京ひよこは言うまでもなく鴨川つばめの変名だ。問題はこの号を持っている可能性があることである。しかしダブたらそのときはそのときなのだ。
バナナグレープを辞して表に出るともういい加減暗くなっていた。このまま西成の宿まで帰ってもいいのだが、なんとなく勘が働いてタクシーを拾い、なんばへ向かう。目指すはもちろん、サブカルチャー全般に強い兎月屋書店だ。旧大阪球場のそばを通り、ああ、ここには昔南海古書のまちがあったなあ、と懐かしく思い出す。タクシーの運転手さんに、このへんはオタクの街ですよ、何かそういうご用事なんですか、と大阪らしい人懐っこい言い方で聞かれ、適当に誤魔化して下りる。約1年ぶりぐらいの兎月屋書店である。
ガラス扉を開けて入るとまず見えるのは映画ポスターやファミコンソフトなどが陳列された通路である。そこから左に櫛型に棚が並んでおり、正面に帳場がある。棚は少年漫画雑誌のコーナーあり、格闘技やミリタリーに強い棚あり、芸能・タレント本あり、鉄道あり、となんでもありのサブカル聖地のような店だが、どうしたことかこの日は特に当たりがない。これは見誤ったか、とやや失望しながら壁際を見ると、そこに意外なものが並べられていた。バンダイの『うる星やつらハイ・スクールラムちゃん』プラモデルである。ああ、これは。学生時代に買いそびれたことを後悔し続けていたお宝ではないか。値段は1800円、倍でも買うだろう。そうか、このハイ・スクールラムちゃんに呼ばれていたのか。そうなのか。急いでお金を払って店を出る。たぶんこのために大阪に来なければならなかったのである。私の勘もまだまだ捨てたものではない、と嬉しく喜びながら一杯飲んで宿に戻る。