杉江松恋不善閑居 48時間かかってできなかった原稿が1時間で書けたこと

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×5。イレギュラー原稿×1(エッセイ)。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

ずっと書けずにうんうん唸っていた文庫原稿があって、それがボトルネックとして仕事の流れを止めていた。書かなければならない内容は頭の中でリスト化されているのに、どうしても形にならないのだ。困った、困った、で二日が過ぎた。

いつもある程度の長さがある文章を書くときは、本文にあたる文章を頭の中できっちり決めてしまう。その冒頭に「冗談」と呼んでいるものをはめこんでみるとするっとあとの文章が出てくるのである。昔話における「むかしあったげな」みたいなもので、語り出しがけっこう重要なのだ。今回は、語り出しは置いてあったのだが、それが本文とうまく結びついてなかった。うーん、この語り出しじゃまずいのか。でも、こういうことが書きたいんだし、と考えているうちにわかった。いつも「冗談」だから、その語り出しは本文に対してもっとふわっとした感じで置かれている。なのに今回は、その語り出しの形も含めて本文なのだ。だから書きにくかったわけである。もしかすると、語り出しと本文の間に別の「冗談」を入れるとふわふわっと動いてくれるかも。そう思って別の話題を入れてみたら、するするするっと動き出し、嘘みたいにすぐ書けた。なるほど、そういうことか。そのあと、えいやっ、で新人賞選評も書いてしまった。

朝起きたら2本原稿を忘れていたことを思い出したので、今までかかって仕上げてしまった。これから外出して途中打ち合わせが入る。夜は高田馬場ばばん場にて浪曲講座である。

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