杉江松恋不善閑居 浪曲会「真夏の江戸川乱歩」と駒込「BOOKS青いカバ」・田端「千歳湯」

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アフタートークにて。左から、博喜、小そめ、奈みほ、綾那、まみ。

某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×6。イレギュラー原稿×2(解説、インタビュー構成)。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

先週木曜日は以前にも書いたように神楽坂・香音里で木村勝千代独演会であったが、そのあとで少し時間が空いたので、ひさしぶりに駒込・BOOKS青いカバに寄った。相変わらず趣味のいい棚で、それなりに賑わっていて喜ばしい。そのあとは田端駅のほうへとぼとぼと歩いていき銭湯に。千歳湯はタオル貸し出しだけではなく、石鹸やシャンプー・リンスなども無料提供していて、本当の手ぶら入浴が楽しめるありがたい湯だ。そこから西日暮里駅のほうへ歩いていくと途中で今は事務所営業だけになっている書誌田高の前を通る。店頭の廉価本だけなら今でも購入は可能だそうである。西日暮里駅前でブックアパートメントも覗く。これで時間切れになり、田端駅へ。昼は昼で浪曲会、夜は夜で浪曲会なのだ。自分の主催ではないので気が楽である。新作縛り、「真夏の江戸川乱歩」浪曲会だ。

お勢登場 玉川奈みほ・沢村まみ

二銭銅貨 富士綾那・沢村博喜

押絵と旅する男 港家小そめ・沢村博喜

最初の「お勢登場」は驚くほど、よかった。これまでに聴いた奈みほさんでいちばんいい舞台だったと思う。奈みほさんは玉川奈々福さん門下で三年目ぐらいのはずだ。年季明け前の修業の身としては当然なのだが、師匠の節をそのままコピーして木馬亭などの舞台に上がっている。当然奈々福さんの水準には追い付かないので、それを比べられてしまう。ところが「お勢登場」では自由に節付けをすることができるので、のびのびと聴けた。もちろん使っている節は奈々福さんのものだが、これを突き詰めていけば別の可能性が拓けるかもしれない。

「二銭銅貨」はご存じのとおり暗号の話で、しかも図解が必要なものだからどうするのだろうと思ったが、フレーズのリフレインなどを使い、節で聴かせるという手法で切り抜けた。これがいけるのなら「D坂の殺人事件」でもいいのでは、と思ったがアフタートークによれば終盤の展開をやってみたかったとのこと。いつも思うが綾那さんは舞台度胸がいい。

「押絵と旅する男」はこの企画を知ったときから、絶対に誰かがやるだろうと思っていたがやはり最後に演じられた。なにしろ浅草寺と凌雲閣が出てくる話なのだ。話はほぼ忠実、現実と幻想が入り混じる箇所を小そめさんは巧く処理していた。これは売り物になると思う。トリネタとして育てていけるのではないか。一つだけ注文をつけると、この話は遠眼鏡、実際に出てくるのは双眼鏡が重要な小道具となるので、それは序盤から観客に印象付けたほうがいいように思う。あるいは扇子を使って表すことも考えていいのではないか。

珍しい浪曲会、足を運んでよかったと言い交わしながら浪曲仲間と近くで雑談。しばらくしたら演者一行もやってきた。あまり店がない一帯なのである。

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