某月某日
今抱えている仕事。レギュラー原稿×7、イレギュラー原稿×1(書評×1)。やらなければならないこと。の・ようなものの準備×1。
他に書くべきことがあったのだけど、こっちを緊急で。
2014年に刊行された、私の二番目の単著である『路地裏の迷宮踏査』(東京創元社)が、電子書籍化されて昨日から配信されておりました。おりました、というのは昨日になって気づいたからで、聞いたら編集者も昨日知ったとのこと。最近は紙の本で出たあとにすぐ電子書籍化されるのが普通なので、こういうことは稀でびっくりしました。いや、しばらく前に電子書籍化の話が出ていたのだけど、その後新たにやりとりはしていなかったのでどうなっているかまったく知らなかったのです。
この本は海外作家約50人を取り上げて、創作活動の背景を考えたり、知られざる事実を発掘したりした肩の凝らない読物です。ゴシップが中心のエッセイというべきなのかな。著者のプロフィールや書誌に関する情報をなるべく多く盛り込んでいるので、評論としての性格が強いつもりなのですが、とにかく他ではあまりないような読物にはなっていると思います。日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞のそれぞれ評論部門にノミネートされて、霜月蒼『アガサ・クリスティー完全攻略』に負けました。その縁で、『完全攻略』のクリスティー文庫版は私が解説を書いております。
連載媒体は、今では『紙魚の手帖』と名を変えた『ミステリーズ!』で、創刊号で始めました。当時の編集長がやってきて、「杉江さんの代表作になるような連載を。瀬戸川猛資さんの『夜明けの睡魔』のようなものを」とおっしゃってくださって始めたのですね。『夜明けの睡魔』にはとても追いつけないと思うのだけど、自分ではとても気に入っている本です。気が付けば時が経って品切れ状態になっていたので、今回の電子化はとても嬉しい。これを機にまた多くの方が手に取ってくだされば、と思っております。
今、『ハヤカワ・ミステリマガジン』では田口俊樹さんがバックナンバーに掲載された作品を新訳するという試みをやっておられますが、そこにつけている作家解説というのがほぼこの『路地裏の迷宮踏査』の続篇となります。両方合わせると、もう百人ぐらい解説したことになるのかな。これからも、こういうゴシップ・エッセイ風の文章は書き続けていきたいと思っておりますで、どうぞご贔屓に。