杉江松恋不善閑居 熊本・通町筋「天野屋書店」

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×5、イレギュラー原稿×1(評論×1)。やらなければならないこと。の・ようなものの準備×1。ProjectMH×1。

(承前)

舒文堂河島書店のある通りには他に二軒の古本屋がある。斜め向かいにあるのが古書汽水社。木曜なので定休日だった。さらに北へ上がっていくと道の左側にあるのが天野屋書店だ。置き看板がまるで喫茶店のようで風情があるし、店頭に出ている均一棚も遠目ではアクセサリー屋のようだ。近くで見ると均一棚そのものなんだけど。洒落た内装という印象だったのだけど、中に足を踏み入れるとそれが一変する。入口の左には文庫棚。その前を通って進と右側に同じく文庫棚だが、サブカル色がより強い棚が現れる。風俗資料の本などが置いてある。これが縦に長い店内の下半分を分割している棚で、右側の棚には手前に均一本、奥に映画や舞台などの芸能関連本などがある。ここまではまだ序の口だ。左側の壁に沿って帳場があり、入口に面した側には戦前から昭和にかけての旧い雑誌がある。店主が奥に座っているカウンターを取り囲むように置いてある。さらに新聞などの紙ものも充実している。単行本よりも紙ものやパンフレットなどに強く反応してしまう向きはここでもう惑乱するだろう。私はした。店主を横目でちらちら見ながら古雑誌を繰り、『熊本放送』1962年の某月号を発見した。これはさっき図書館でコピーしたが買うのだ。

右側壁の奥にはさっきの芸能関連棚の奥に郷土資料本の一画があり、これがなかなか濃い。欲しかった全集のばら売りがあってお安かったのだが、旅先でもあり、ここでバラで買ってしまうのはどうかと思いとどまった。そのあたりにまた紙ものがある。油断しているとすぐに紙ものに出会うのである。そこから文学棚であり、歴史棚、奥の戦争資料などがある一画へと続いていく。二階もあって、そっちは近世の刷り物や絵などが中心のようだ。『熊本放送』だけでおなかいっぱい。とても安いのでお金を支払って外に出た。(つづく)

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存