某月某日
今抱えている仕事。レギュラー原稿×4、イレギュラー原稿×1(評論×1)、講義×。
今週の打ち合わせ×3
やらなければならないこと。の・ようなものの準備×1。ProjectMH×1。
しばらくYouTubeのほうにかかりきりになっていて、本芸の更新が滞っていた。時間は有限なのでどちらかが忙しくなると手が回らなくなる。どうかお許しを。
青春18きっぷの期間に入ったので、思い立って静岡市清水区まで行ってきた。静岡に三つ残った未訪の古本屋、清水書店を訪ねるためである。過去に二回挑戦していずれも中に入れず、もう縁がなかったものと諦めかけていたが、twitterで日曜日に開いているのを見た、という書き込みがあったので、もう一度だけ挑戦してみることにしたのである。
横浜駅からJR東海道線に乗って熱海まで。そこから沼津行きに乗り継ぎ、さらに豊橋行きに。清水駅で下りたら、港南方面・市立病院及び忠霊塔行きというバスに乗る。一時間に一本しかないので、それを逃したらタクシーを使うしかない。約十分ほどで向田町という停留所に着くので、そこからは徒歩だ。帰りのバスを確認すると、二十五分後だった。開いてなければ即戻ってくればいいし、開いていてももしかすると間に合うかもしれない。
川沿いの道を入って、住宅街のほうに伸びる道を辿る。真っすぐ行くとT字路になっているのがわかる。そこにぶつかって左側に清水書店がある。開いていればよし、閉まっていたらすぐUターンだ。
開いている。
わ、わ、開いている。過去二回挑戦して閉まっていたときとは明らかに様子が違うので開いているとわかる。なんということだ。清水書店が開いていた。いや、開いているのは営業中だから当たり前なのだが、やたらと興奮してしまう。
中に入ると、正面の帳場は無人だった。事前の情報で、店の後ろがご自宅になっていて、不在の場合はそこから戻ってくるしかないことはわかっている。即座に二十分後のバスは諦めた。仕方ない。今度はいつ来られるかわからないのだ。ここは隅から隅まで見ないでどうする。
店は左右両面に書棚があり、真ん中縦に両面棚の仕切りがある振り分け型になっている。右側が小説単行本、左側が実用書や硬めの本で、真ん中がアダルトや雑本、文庫という構成だ。ツイートで、時間が止まっているような古本屋という表現をしている人がいたが、とんでもない。ここ数年の新刊も入っている。仕入れをどうしているかはわからないが、ちゃんと動いている証拠だ。ここ最近、石原慎太郎の小説本を探す癖がついているので見るが、さすがにない。石原慎太郎は本当にない。見ていると、雑本のコーナーに早稲田大学漫画研究会著の『おならのブルース』(ワニの本)があった。学生時代の堀井雄二とさくまあきらが執筆者として参加している本だ。よし、これで坊主は免れた。その隣に橋本与志夫『おお! ストリップ 額縁からマナ板までの30年』(スポーツニッポン新聞社)がある。あ、伴淳三郎『伴淳好色放浪記』(カッパブックス)があるぞ。なんと豊漁だ。
漁るべきものは手に入れたが店主が戻ってこない。しばらくしてバスの時間がとうに過ぎたころにようやく帳場にやってこられた。勘定をしてもらって少し話す。今の営業時間は、平日が夕方頃、土日は午後早めからそれぞれ七時くらいまでということだ。私はこれまで、早く来過ぎていたのである。清水区のみなさん、夕方ですよ、夕方。
本に値付けはされておらず、単行本が四百円、新書が二百円、文庫が百円だった。だいたいそんな感じだと思う。見ていると、おばあさんがやってきて「しばらく来られなかったの、ごめんなさい。今日も何か借りていくわ」と言いながら本棚を見始めた。もしかすると近所の人向けに貸本屋も兼業しているのかもしれない。今時珍しい営業形態だ。これは絶対行っておかなければだめだと思う。同好の士よ、急げ。
店を出てぶらぶらと清水駅へ向かう。どうせしばらくバスはこないのである。歩いていると、道の左側に蘭蘭という中華屋があった。先日「町中華で飲ろうぜ!」で玉袋筋太郎御大が訪ねていた店だ。前回清水書店を訪ねそこなったときに失意で入ったのを思い出す。今日は店に入れたので蘭蘭には寄らない。地元の人がみんな行くぐらい餃子がおいしいそうです。