杉江松恋不善閑居 スギエゴノミ(デッドラインまであと57日)

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

某月某日(デッドラインまであと58日)

来週までの〆切:レギュラー月刊×1、レギュラー隔週×1、レギュラー週刊×2、イレギュラー×1、文庫解説×1。

来週の予定:演芸会主催×4、演芸会出演×3。

動画収録予定:今月はあと4本。

書き下ろし:ProjectMT、ProjectTK、ProjectTS。

夜の明けないうちに起きて書き下ろしの仕事をしようと思うが、寝坊してしまい、結局午前5時から始める。それでも3時間くらいは没頭できた。1日6時間がノルマだから3時間の借金になるが、これは仕方ない。午前8時半に家を出る。本日はアートスペース兜座で1日演芸会なのである。

午前9時半、日本橋兜町のアートスペース兜座に到着、ビルの前で工事をやっている。なんと1日続くらしい。客足に響かなければいいのだが、と思う。上がって会場に入ると、すでに東家千春さんと会場のT田さんが椅子の設営などをしている。そちらをお任せして、チラシのセッテイングなど。やがてお手伝いをしてくれているT井さんが到着。日付と金額のスタンプを押して、チケットを作る作業をお願いする。

午前11時開演。東家千春勉強会である。曲師は沢村理緒。勉強会も三回目ということでいい雰囲気だった。午後0時半ごろに終演。会の途中で、次の会の曲師である広沢美舟さんが到着された。やがて山梨県の上野原市から木村勝千代さんも到着。こちらの会はもう3年目に入るので、なんとなく安心できる。この日は「壺坂霊験記」を予告ネタにしていたので、会場に流すBGMを志賀國天寿の江州音頭にする。壺坂が入っているのだ。

午後2時開演。木村勝千代独演会。曲師は広沢美舟。先日NHKラジオの「浪曲十八番」でも放送された「甲州街道桃太郎伝説」と「壺坂霊験記」の二席で、間に私が入ってトークコーナーがある。壺坂は関東節に載せて延々と登場人物の心情が語られる。他の演者だと途中で悪者が入ってくるくだりが結構長いのだが、それはばっさり切って夫婦の物語に特化している。午後3時40分頃終演。途中で次の会に出演される川嶋信子さんが来られて壺坂を聴いておられた。

浪曲のセットをばらして、今度は琵琶用の高座に作り変える。ここからが大変で、落語の高座はなるべく高いから80センチぐらいの台が必要だが、琵琶はもっと低いほうがいいので40センチが望ましい。間をとって60センチということになった。高座を組んでみて、わかったことは琵琶を置くスペースがないことで、急遽2倍の広さに作り変える。このへんはT田さんが臨機応変にやってくださって助かった。

途中でゲストの柳家㐂三郎さんもいらっしゃる。琵琶と落語の共演というのは全員が初めてなので、まずは相談が必要である。私からのお願いで、川嶋さんに㐂三郎の出囃子を弾いていただけないかと提案して、お二人に快諾いただけた。もちろん「ゲゲゲの鬼太郎」主題歌以外にありえない。琵琶、落語、琵琶の構成ということになり、㐂三郎さんのネタはお任せ、ということで話はまとまった。

午後6時開演。多数のお客さんが来てくださって、感謝である。前半は琵琶を聴いたことがない方でも楽しめるように、ということで童謡の間に怪談「置いてけ堀」を挟み込むという構成になった。怪談なので、場内の照明を落としたほうがよく、それは私が担当する。

琵琶はどちらかといえば床に直座りしたほうが弾きやすいそうなのだが、高座の状態から薄い座布団を使っていただく。落語に代わるときに交換することにした。川嶋さんが降りて、座布団の交換、楽屋から「ゲゲゲの鬼太郎」が響いてきて、まず客席がどっと沸く。頭を下げた㐂三郎さんが「私は鬼太郎ではなくて㐂三郎です」と言ってもう一度沸く。これでもうばっちりである。ネタは何を選んだかな、と思ってみていると、すっと「死神」に入る。この日のトーンからベストの選択である。入れごとなく綺麗に演じて、㐂三郎さんは高座を降りた。さすが。やはりこの人にゲストをお願いしたのは大正解だった。

仲入り後は川嶋さんが再登場して「平家物語壇ノ浦」を演奏する。演目を告げたとたん、ガッツポーズをしたお客さんがいた。琵琶を聴くために残っておられた勝千代さんである。実は勝千代さん、先月山梨でほぼネタおろしに近い「耳なし芳一」をやっておられ、その中に芳一が壇ノ浦の段を語る場面があるのだ。このお二人の共演というのもいいよな、と思いつつ琵琶を聴く。素晴らしい演奏だった。

すべてを片付けて外に出たら午後9時近かった。さすがにこれから帰って仕事というのは無理。近所の日高屋でホッピー。一人で祝杯。

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存