午前7時台に家を出て日比谷線と常磐線を乗り継ぎ、茨城県を目指す。友部駅で水戸線に乗り換え、三つ目の稲田駅へ。御影石の採掘で知られるこの地は、浪曲師の金看板・三門博が終の住処を設けたところだった。三門博の眠る西念寺で、その誕生日である5月5日に孫弟子の三門綾さんが浪曲会を開くという。これは行かずばなるまい。
ちょっと前に綾さんから連絡があり、もし来られるなら木戸番を頼めないかという。浪曲になじみのないお客さんばかりだろうし、人手が足りないだろう。一緒に行くKさんとも相談して二人で手伝いをすることにした。
西念寺は浄土真宗の名刹で、境内の緑が目に眩しい。銀杏や紅葉の大木もあり、秋の眺めもさぞ美しかろうと思う。そんな寺の境内で浪曲というのはいい考えである。綾さんからチラシを受け取って案内用に貼り、三門博の墓前にも線香を差し上げた。12時半、開場。
お客さんはやはり年配の方が多く、こどものころにラジオで聴いたという方もいらっしゃった。これがきっかけでまた浪曲に親しんでいただければいいことである。準備をしていたら綾さんから、途中のトークコーナーで三門柳さんの聞き役を務めてもらえないか、と頼まれた。昨年9月の独演会でもやっているので問題ない。引き受けた。
演目は以下の通り。
出世定九郎 三門綾・広沢美舟
トークコーナー 三門柳
中入り
唄入り観音経 三門柳・広沢美舟
トークでは三門博の稲田時代についてまず話を振り、そこから柳さんに師匠について存分に語っていただいた。最後は唄入り観音経の話題で締めて後につなげる。もともとが経文の話なので寺の本堂で演じられるのにふさわしい外題である。
1時間半ほどで散会というのはほどがいい。お客さんたちもまた会をやってくださいね、と口々に言いながら帰って行かれたので、成功と見ていいだろう。来年も同じ5月5日に開催予定。片づけをして、楽屋に顔を出し、お茶をいただいてKさんと帰京。暑かったこともあり、帰りの水戸線では熟睡してしまった。
メールを見たら過去の原稿を二次利用させてもらいたいという依頼が来ていた。これも仕事の依頼と見ていいだろう。というわけで勤務評定は1.0。