杉江松恋不善閑居 もう転職はできないので一生ライターでいるしかない

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某月某日

前日に続き、一日籠ってお仕事。急ぎのインタビュー原稿が仕上がり、送稿した。もう一つ手がけるも、完成には至らず時間切れとなる。原稿を一本送ったので0.5、また新しい仕事の依頼が三本、これは正確に言うと二本セットが一つと独立した一本の仕事である。これで依頼を貰って3.0。さらに他の人を売り込む営業のアポイントがとれたので2.0。合計で5.5という勤務評定となった。まずまずだろう。

原稿料は、今回送ったインタビューのものによって6月末までに稼がなければいけない目標額に到達し、進捗率は100.66%となった。しかし、よく考えてみたらまだお金は必要だったのである。お世話になっている会計事務所に支払いをしないといけない。その分を加えて目標額を上積みすると、進捗率は79.64%となった。あともうちょっと頑張れ、私。

SNSを見ていたら、ライターが廃業して転職するという書き込みがあった。偶然見つけたのではなく、知り合いの知り合いである。専門分野はまったく違うので私にできることは何もない。ただ、これからの人生が健やかなものであることを祈るのみだ。

ライターが転職するとしたら、ぎりぎりの年齢はどのへんだろうか。人手不足の世の中ゆえ、選ばなければ仕事はいくらでもあるだろうが、家族を養わなければならないとしたら、かつかつの収入では厳しいだろう。独り身なら年収300万円台でもやっていけそうだが、家族持ちなら400万円以上ないと厳しいと思う。その額を稼ぐための転職となると、少なくとも男性なら厄そこそこ、40代前半にはしておくべきではないか。

40代前半といえば私はPTA活動の真っただ中で、その後は電撃座を通じて落語会主催にはまり、それを断念して同人誌活動に力を入れるようになり、次いで浪曲に深い興味を持つようになった。つまり転職とはまったく無縁のところで生きてきた。気が付けば50代になっていたので、もはや時機は逸してしまったと思うべきだろう。一生ライターで食っていくしかない。他にできる仕事も思いつかないので、これで頑張っていくことにする。

転職の機会を逃したことに後悔の気持ちはないが、将来に対する不安というのは厳然として存在する。一生分の貯金でもできない限りはずっと抜けないことだろう。自由業の宿命である。その不安について考えても仕方ないので、営業をして仕事を増やし、何年か先まで著書の予定を立てようとしているわけである。止まったら駄目なんだな。怖くて死にそうになるな。

私が他の人の仕事を出版社に売り込もうとしているのも、それが一つの理由である。物書きは版元と結びつかないと収入が得られないのだけど、ただ原稿を書いているだけでは仕事にならないからね。営業が苦手な人、やり方がわからない同業者は、なるべく後押ししていきたいと思う。私も若いとき、そうやって助けてもらったという恩があるからさ。

本日は夕方まで仕事をして、その後はアートスペース兜座へ。立川半四楼さんの落語会を企画したので、そのお世話である。立川談四楼さんの六番弟子になる半四楼さんは東京大学を出て一流企業に勤めながら、落語への夢が忘れられず中年の星として弟子入りした。これからの半生を落語に賭けるということで半四楼。ぜひ応援してあげてください。

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