杉江松恋不善閑居 文庫解説はこうやって書いている

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某月某日

前日に終えられなかったインタビュー原稿を完成させ、送稿。書きあぐねていた文庫解説に挑戦する。なんとか切り口を見つけて進められたが、残念ながら時間切れ、すみません明日必ず、とメールをして家を出る。途中で他人の仕事の持ち込みについて2件営業をかけた。本日の業務評定は4.5、6月末までに稼がなければならない額に対する進捗率は88.87%ととなった。

私はよく、冗談が思いつかないから書けません、と言い訳をする。この場合の冗談というのは、味付けとかスパイスのようなもので、その文章に必要な情報を読みやすい形で配置した時点で実際にはほぼ完成形になっている。ただ、それだけでは情報だけの文章になるので、最後になじみやすくするための何かが必要になるのだ。それが冗談である。だいたいは冒頭に置くことになる。私が商業媒体に書く文章は最初が一行で終わるようにしてある。それが切り口で、こういう感じで文章を読んでもらいますけど大丈夫でしょうか、と問うために置いてあるのである。よく表題と間違われて、ゲラで直すことになる。あれは表題ではないです。表題をつけるときはもっとわかりやすい形で書きますので。

文庫解説は短いものだと原稿用紙で6枚程度、長くても10枚くらいが普通だ。以前、何枚書いてもいい、と言われたことがあって42枚書いて持っていったら叱られたことがある。今考えると当たり前なのだが、でも何枚書いてもいいって言ったからね。結局なんとかして載せてもらった。

原稿用紙10枚は4000字である。1行40字設定なら100行だ。私の場合、最初に書くべき情報を大別し、見出しのようにして並べる。そこに頭の中で考えた構図から、Aは20行、Bは30行というような形に100行を振り分けてしまうのである。これでほぼ完成。もちろん書いている間に興が乗って、最初の構想が崩れることもあるが、それはそれでいい。

結論は、一応考えてから始めるのだが、それを書かずに終わることもある。それまで書いた文章で十分で、言わずもがなの付け足しになるだろう、というようなときだ。そういう場合は準備してあった結論を捨て、余韻を誘うような結語を置いて文章を終える。これは書く前には考えない。書いているときの疾走感みたいなものが、そのまま出ないと意味がないからだ。

設計図と冗談と余韻。その三つで私の文章は、特に文庫解説はできている。

さて、出かけたのは立川半四楼さんの落語会を主催するためだ。直前になってばたばたとキャンセルが入り、予約が減ってしまったので心配していたのだが、当日のお客様がいらしてくれてなんとかなった。ありがとうございます。

壷算

粗忽の釘

中入

三方一両損(ネタおろし)

どれも人間性がよく出た感じの噺で、聞いていて気持ちよかった。いい二ツ目が誕生したと思う。ぜひ応援してあげてください。終演後は近所でちょっとした打ち上げ。安堵もあって結構酔っ払った。

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